番外編

□ハロウィン2023
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「「trick or treat!」」

「!?って、なんだ。侑士くんと謙也くんか。驚かせないでよ」

びっくりしたーと言う私に侑士くんは「で、お菓子はあるんか?」と尋ねてくる。謙也くんもそわそわしながら私の返答を待っている。

「持ってるよ、と言うか2人とも仮装して商店街を練り歩くんだね」

「ハロウィンと言えば仮装やん」

「菓子も貰えるし」

なあ?と向き合って首を傾げる侑士くんと謙也くん。仲良いな。ちなみに2人の仮装は、侑士くんがきつね男に扮して謙也くんがイグアナの着ぐるみを着ている。

「そっか、じゃあハッピーハロウィン」

そんな2人にお菓子をあげる。謙也くんは嬉しそうだけど、侑士くんは残念そうにぼそりと呟いた。「なんや菓子持っとるんか」と。

そんな侑士くんに謙也くんは「残念やったな、侑士」と彼の肩を叩きながらニンマリと笑う。

どういう意味かわからずにいると、
謙也くんは「気にせんといて」と言う。
気にするなと言われても、チラッと侑士くんを見ると狐の耳や尻尾が彼の残念そうな表情と連動しているようで心なしか垂れている。気になるな。

そんな事を私が思っていると、
謙也くんのスマホが鳴った。

相手は白石くんでなんでも虎の着ぐるみを着た遠山くんが暴走しているから応援に来てほしいとか。謙也くんはわかったと言って電話を切る。


「謙也、お疲れさん」

「うっさいわ、ほな、風宮。またな」

「うん、またね」

「そや、侑士。お前よりもお菓子めっちゃたくさんもらうからな!」

はいはい、と気のない返事をする侑士くんに「絶対に西が勝つ!」と言い残し走り去っていく謙也くんの背中を見つめた。遥か彼方へと消えた謙也くん。残されたのは不貞腐れたきつね男と私だけ。

「また東と西で対決してるの?」

「まあな。」

「元気ないね?」

「正直、もう東と西の対決なんてどうでもええよ」

侑士くんの言葉に驚きながら首を傾げていると、彼は「ちなみにこの飴ちゃん、もうないん?」と訊いてきた。

「お菓子はそれと謙也くんにあげたもので最後だよ」

「ふーん、そうか」

私の言葉におもむろに飴の袋を手で切って飴玉を口に入れる侑士くん。カランコロンと歯に当てながら音を鳴らして舐め出す。

「じゃ、私もそろそろお店の手伝いがあるから行くね」

踵を返して言うと、
侑士くんは「ちょい待ち」と私の肩に手を置いて耳元で囁いた。

「trick or treat」

「!?え、それは流石に反則じゃ」

「同じ相手にもう一度言うなってルールはないで」

イタズラ決定やな、と先程まで残念そうに不貞腐れていた狐男はもういない。いるのは、狡猾な獣。怪しげな笑みを浮かべて、私の唇を奪う。

「!?」

私の口の中には先ほど彼にあげた飴玉が戻ってきたが、すぐにまた唇を奪われて飴玉が消える。


「ほんま甘いなぁ」

濡れた唇を親指で拭う侑士くん。
そんな彼の行動に恥ずかしさで顔も体も熱くなる。

「侑士くんの、だらぁ!」

「男はみんなケダモノやで」

怒る私にサラッと返す侑士くん。
次のハロウィンは大量のお菓子を用意をしようと思った。

END

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