アネモネ*夏戦争
□夏戦争-陣内家-
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「起きて、冬音。着いたよ」
ゔぅー….と呻る妹。起きてくれないとバス発車しちゃう。
「大丈夫だよ、お嬢様ちゃん達。待ってるよ」
そう朗らかに言うおじさん。
なんて優しい人なのだろうか__。今時こんな人がいるなんて…。
錆び付いたバスの標識。昔は土路だっただろうコンクリートの道路。人を運ぶのは輿でもなく鉄の塊。麻や綿の服ではなく化学繊維まみれの服。
時代は随分と変わった。兵も殿様も居ない時代。ただ、ゆるりゆるりとする時代になっていた。
「姉上…?」
そんな事を考えていると、妹は目が覚めたようだ。少々、ぽけー.っとはしているが大丈夫だろう。
「ありがとうございました」
キャリーバックとお婆様の誕生日プレゼントを持って立ち上がる。学校の課題がある分、随分と重い荷物になってしまった。あらかじめ、私服となる着物は送ってあったはずだが。
「気をつけるんだよ。ここからだと…陣内家かな?あそこの婆様には色々お世話になったからね。よろしく言っておいてくれ」
…流石、お婆様。お婆様に助けられた人がここにも居ましたよ。
「わかりました。伝えておきますね」
ふわり.と微笑んで言う私。愛想笑いは得意になっていた。なんて可愛げのない子供だろうか…。考えながらバスの運賃を払う。田舎はバス料金が高い気がする。ふとそう思った。
「ああ、よろしく頼むよ」
それじゃあ.と言って去るバス。忘れないようにしなければ。頭のメモ帳にメモっといた。忘れないようにしなければ…。
「久しぶりだね、姉上!!」
ニコニコし始めた妹。そうだよね…家居心地悪いもんね。佳主馬くんとOZでバトルしよーっと。
「そうだね。冬音用のパソコン持ってきた?」
妹はパソコンが得意。ハッカーの中のハッカーなの。ハッカーは依頼されてやるものであり悪ではない。悪なのはクラッカーである。誤解されやすいけどね。
「勿論だよ姉上。依頼来たらどうするの?」
一つ訂正しておかなければいけないのは、妹は4才女であり決して大人ではない…。あまり変な事はして欲しくないのだが。
「そうね…あまり無理しちゃだめよ」
一応は言って聞かせるが、どうなんだか。
「あっ。万助叔父様だ」
指を指した方を見ると毎度お馴染みな、ランニングシャツが…。
万助叔父様、まったく変わりませんね。