空に知られぬ雪

□先生
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どれくらいホマレを抱き締めていたのか、
それくらいにしてやんなという母ちゃんの声に、ホマレを離してやり今は母ちゃんの隣に、机を挟んでホマレと向かい合って座っている


ホマレの隣にはカカシが、俺とホマレの間のところにはシカマルが立っている

さっきから俺も含め、誰も声を発しない
目の前にいるホマレはうつむき、シカマルもなにも言わず俺とホマレを交互に見やっている

こいつは勘のいいやつだから、俺とホマレの間に走っているものに気づいているのかもしれないな



母ちゃんがいれてくれた茶を一口飲む

コト

俺の置いた湯碗の音が響く


「それで…」

俺の声にうつむいていたホマレの肩がビクッと動いたのが分かった

だが俺はそれを無視して話を続ける

「今の今まで連絡もせず…
どこで
なにをしていた」

「… … …」

「これだけ心配をかけたんだ

俺たちは聞く権利があるし、お前はいう義務があるだろ?」

「… … …」

「聞いてんだ」

「… … …」

ホマレはうつむいたままなにも答えない


「おい、聞いてるんだ
ホマレ

答えろ」

「… … …」

「おい」

「… … …」

「ホマレ」

「… … …」

母ちゃんのアンタという声を手で制しホマレから目を離さずホマレを見据える

「いえねぇこたぁねぇはずだ

言え」

「… … …」

「ホマレ」

「… … …」

顔を上げろとホマレを見続けたまま言う

ホマレの視線と俺の視線が交わる

「黙ったままじゃわからねぇだろ
いえ、ホマレ」

できる限り穏やかな声で
ん?とホマレに問いかける


「…ごめんなさい」


「謝ってほしいって言ってんじゃねぇ

どこで
何をしていたか
なんで連絡できなかったかを言えって言ってんだ

…簡単だろ?」

「…ごめんなさい」

「ごめんなさいじゃねぇ」


「… … …」


「言え」


「… … …」






「ホマレ!」

ガタッ

「父ちゃん!」
「親父!」

身を乗り出し、ホマレを掴もうとしたとき母ちゃんとシカマルに掴まれ、止められる

カカシもホマレを守るようにいつでも庇える体制になっている


「…言え!ホマレ」

「… … …」

それでもホマレは何も話そうとしない


「ホマレ!!」

「アンタ!」




「…すいません
シカクさん、ヨシノさん」

カカシが言った

「こいつ、これまでのこと
俺にも、誰にも
一切話さないんです

本当に不義理なこととは分かっています
ですが、
今は、
本当に申し訳ないんですが、

これで勘弁してやってくれませんか」

すいません

とカカシが頭を下げた



俺はカカシを見た後ホマレに視線を戻す

「言えないのか」

うつむいたホマレの首がコクリと小さく動いたのが見えた

「言えねぇのか、言いたくねぇのか

どっちだ」

ホマレはうつむいたまま何も言わない


「… … …」
「… … … はぁ

分かったよ
今は何も聞かねぇ」

俺の負けだ
とため息を吐いた

このバカ娘がこれだけ言わないんだ
よっぽど言いたくねぇことなんだろう

それにカカシの鋭い視線に、シカマルの咎めるような目
きわめつけに母ちゃんの不安そうな視線

母ちゃんにそんな顔されちゃあ敵わねぇな

「ホマレ
顔を上げろ」

俺はうつむいているホマレの顔を上げさせる


「今は何も聞かない

今は…だ

いいな、
いつか絶対に話せ

これは約束だ」

俺はもう一度真面目な顔でホマレに言った


ホマレはまたうつむき、小さく頷いた











「よしっ!

じゃあ気を取り直して、とりあえず今日は祝いだ」

なぁ母ちゃん

と静まった雰囲気を切り替えようと母ちゃんに声を掛ける


「そうだね!
やっとホマレが帰ってきたんだもの!
今日はご馳走よ!」

カカシ君も食べてくだろ?と母ちゃんがカカシに声を掛ける

母ちゃんの中ではホマレが泊まるのは決定事項みたいだな


ホマレは俺の初めてで唯一の弟子だ
ちっけぇ頃からずっと見てきたし、育ててきた

俺と母ちゃんにとっちゃあもう娘だ

シカマルももちろん可愛いが、娘となりゃまた別物だろ?
可愛くねぇはずがねぇ


あいつがいなくなってからも、あいつの部屋は時たま掃除をするくらいで、何もいじらずにそのまま残しておいた

死亡通知が届いたときの絶望は表現できねぇ
死んだなんて信じられなくて、信じたくなくてだれも亡骸を見ていないということだけを救いにまだ生きている、いつかひょこっと帰ってくると信じていた

やっと帰ってきやがったんだな
いえねぇ事なら今は許してやる

「あ、いえ
私は!」


「ホマレ」

「っはい!」

母ちゃんの声に帰ろうと立ち上がりかけたホマレが俺の声に反射的に座る


「俺たちと距離をとるのは許さねぇ

今日は特に予定はねぇんだろ

なら
泊まっていけ」

こういう報告をしにくるときに多分予定は入れてきてねぇ


こいつのことだ
どうせ俺らに言えねぇのが悪いとかなんだか考えて距離を取ろうとでもしてんだろう

そんなこと俺は許さねぇよ

「っでも」

「あぁ?なんか予定でもあんのか」

「いえ、ないです…けど」

「なら問題ねぇな
だろ?」

「…先生、ヨシノさん、、、シカマル
ごめんなさい

有難うございます」


ホマレは深く頭を下げた

「俺からもまたこいつをよろしくお願いします」

カカシも頭を下げた
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