長編

□傷口
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珠理奈と出会ったのは
入学式が終わって帰る途中の
出来事だった

目の前で勢いよく
走って転けた人がいた

制服が同じだから
同じ学校だよね

大丈夫かな?

その子は脚を抱えて
うずくまっている

このまま、スルーするのも
何か…あれだよね…

私はその子に駆け寄った


「大丈夫?」


「だ、だいりょうぶです…」


その子は泣きそうだったけど
ぐっと堪えていた

その子の膝をみると擦り剥けていて
血が出ていた

「立てそう?」

「なんとか…」

「あそこのさ、
ベンチまで歩ける?」

その子は私を見て頷いた

私はその子を抱えて
ベンチに座らせた


消毒する物持ってないなぁ…

そう言えばさっき、自販機で買った水あったな、まだ開けてないし
これで…

私は直ぐに鞄から水を取り出した


「ばい菌とか入っちゃ
いけないから洗うね

これ、まだ飲んでないから」


私はその子の傷口に少しずつ
水をかけていった


「痛いけど、我慢してね」


「ぃ…痛ぁ…」


それからティッシュで丁寧に拭き、
ハンカチで傷口を覆ってあげた


「ありがとうございます…」


「同じ学校だよね?

もしかして1年生かな?」



「…はい

松井珠理奈っていいます」



「私は3年生の松井玲奈

帰ったら、ちゃんと消毒してね

じゃあ、気をつけて帰りなよ」


「ま、待ってください

よかったら、
連絡先教えてくれませんか?

ハンカチ返したいですし…」


「別にいいよ、ハンカチぐらい」


「お願いします」


私はその時ドキっとしてしまった
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