リクエスト

□178−145=33
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今日の授業はすべて終わり、終礼での先生の長い話を右から左へと聞き流す。早く終われ。早く終われ。
なんて思っていたら、いつの間にか終わっていたらしく「起立、礼」の号令をかけられる。それに合わせてみんな起立し、「さようなら」と言って解散。これにて本日の学校はおしまい。準備をしていざ帰ろうとすると、教室の前の扉からひょこっと花京院君が顔を出してきた。

「名前さん」
『花京院君!』

私は承太郎君と同じクラスで高校3年生、花京院君は私達の1つ下の高校2年生。
受験生である私達は、帰って勉強する人と、学校に残って勉強をする人と2パターンいる。私は基本的には学校で残って勉強するのだが、今日は予定があって帰ろうとしていた。
その予定は花京院君にも関係がある。教室に迎えに来たのはそのためだろう。

「相変わらず小さくて可愛いですね、名前さんは」
『ぅ、うるさいなぁ…花京院君が大きすぎるんだよ!』
「承太郎には負けますけどね」
『あんな巨人と比べちゃダメだよ』
「誰が巨人だ」
『わっ』

承太郎君にガシッと頭を掴まれる。痛いのもあるけど、髪の毛が!セッティングした髪の毛が!

「承太郎、名前さんにあまり触れないでくれよ。僕のなんだから」
「てめーも相変わらず名前大好きだな」
「当たり前だ。こんな小さくてちょこちょこした可愛い名前さんだぞ?好きじゃないなんて言う方がおかしい。いや、他の奴に好きになられても困るがな」
「…やれやれだぜ」

承太郎君の手から解放されたかと思えば、花京院君に抱きしめられる。承太郎君と花京院君でも身長差はあるが、どちらにせよ私からしたらどちらも大きい。145cmである私と178cmである花京院君との身長差は33cmもあるのだ。抱きしめられたりなんかされたら(もう抱きしめられるけど)、目の前は花京院君の胸なのだ。加えて花京院君の胸筋で少し息苦しくなる。

「今日は名前さんとお家(うち)デートなんだ。羨ましいだろ、承太郎」
「それはいいが、そのデート相手が今にも窒息死しそうになってるぜ?」
「あ…。すみません、名前さん、大丈夫ですか?あまりにも小さくて可愛いものだからつい」
『さっきから小さい小さいうるさいッ』
「事実ですから」
『〜〜!!もう私先に帰るよ?!』
「行き先は僕の家でお願いしますね」
『……はぁ』
「じゃあ、承太郎、また明日」
「あぁ」

承太郎君が教室から出て行くのを見守り、私も鞄を持って花京院君の方を向くと、花京院君は少し寂しそうな顔をしていた。

『…花京院君?』
「先に行くなんて冷たいこと言わないでください。一緒に帰りましょうよ。この時間をどれだけ楽しみにしてたと思ってるんですか」
『…うん、ごめんね。私も1人で帰るつもりはなかったんだけど…つい。私も一緒に帰るの、楽しみにしてたよ』
「…その言葉が聞けてよかったです。さ、行きましょう」

教室の扉を潜り抜け、学校の門を抜け、花京院君の家へと向かう。
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