リクエスト

□愛し愛され
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「JOJO!一緒に帰りましょ!」
「JOJOは私と一緒に帰るのよ!」
「やかましいッ!」

承太郎の周りはいつも賑やか。たくさんの女の子に囲まれてちやほやされている。そしていつもの一言を承太郎が発しても逆効果で。そんな彼らの様子を私は後ろで見つめている。
あの長い階段を登っていけば分かれ道。
「JOJO、また明日ね!」と女の子たちは右の方向へ。承太郎はヌシヌシとその大きな身体を左方向へ。その隙を見計らって私も左へ行く。

『承太郎、今日もお疲れ様』

とちょっと笑いながら言えばムッと顔をしかめる。でもその表情は一瞬で、すぐに私を抱きしめる。

『おうおう、どうした?』
「……名前…」

ギャップというやつかな。学校や人前だと冷静沈着、つまりクールなのだが、私と二人きりになると所構わず甘えてくる。承太郎曰く「名前と離れている時間がツラい」とかなんとか。他の人が、あの承太郎がこんなにも甘え太郎になるなんて知れば驚くだろう。

「…名前、今日は泊まっていけ」
『私はいいけど…聖子さんにも迷惑になっちゃうよ』

聖子さん、承太郎のお母さんにはいつもよくしてもらっている。とても優しく、しかしお茶目な感じで、聖子さんと会話をすると同い年と話をしているような感覚になる。

「あのアマは今日はいねーよ。久々に帰ってきた親父と旅行に行っている」
『そうだったんだ!そっかぁ…聖子さんに会えないんだぁ…』
「俺がいるのになんでガッカリすんだよ」

と私をさらに強く抱きしめる。きっと嫉妬したのだろう。

『もう…私の一番は承太郎なんだから、ヤキモチ妬かないの』
「……」

今度は私の首に顔をうめ、すりすりと甘えてくる。嬉しいのだが、まだここは外。さすがに恥ずかしい。

『承太郎、荷物取ってくるから。後で承太郎の家に向かうから先に帰っておいてよ』
「…俺も名前に着いて行くぜ」

と、私の手を握り歩き出す。きっと今の承太郎は、私に早く甘えたいけど離れるのは嫌、という心境だろう。あくまで私の推測だけど。

『承太郎、歩くの早いよ』
「早く名前を補充したいんだよ。さっさと荷物を取って俺の家に行くぞ」

私の推測通りだった。承太郎のほうをチラリと見てみると、学帽の鐔(つば)を下げて顔を隠していた。しかし、承太郎より身長が数十cmも低いため、承太郎の顔が赤くなっていることはすぐにわかった。
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