リクエスト

□嘘つき
1ページ/4ページ

『嘘つきは嫌いよ。』
「僕は嘘をつかない。」
『本当に?』
「勿論。現に、今までに君に嘘をついたことがあるか?」
『…それもそうね。』

ほんの旅の一コマ。たった一コマ。それでも私たち「旅人」には長い一コマなのだ。いつ敵が現れるかわからない緊張感の中で、たわいもない話をする。普通のことがこれほど愛しいと思ったことはなかった。

「なんだ〜?花京院、お前、名前に嘘ついたのか?」
「ついてないと言っただろうが。どちらかといえば、名前のほうが嘘つきだよ。」
『えー、嘘ついたことなんて』
「名前は自分の体調が優れなくても「大丈夫」と言って人の心配ばかりするじゃあないか。僕は君のほうが心配で気が気でないよ。」
『典明…。』
「おーおー、おあついねぇ。」

私を心配してくれる典明、それを茶化すポルナレフ、「やれやれだ。」と静かに見守る承太郎、ジョースターさん、アヴドゥルさん。みんなが笑いあっているこの時が大好きだった。何があっても、最後にはこの時が来るって信じてた。この幸せが崩れるなんて、信じたくなかった。

「名前?大丈夫か?」
『あ、うん、大丈夫。ありがとう、典明。』
「何かあればすぐ言ってくれよ?」

そう言って典明は私の頭を撫でた。



私には友達が人並みにはいた。それでも、「信用できるか?」と聞かれたら、「できる」とは答えられない、すなわち「友達以上、親友未満」か、それ以下かという関係。もちろんみんな私に対して優しかった。けれども、「スタンド」の関係で人と密な関係になるというのができなかった。

しかし、私には「信用できる人」ができた。初めに見つけたのは承太郎、そして典明、ジョースターさん、アヴドゥル。
典明に先程のことを伝えると「僕と少し似ているね。」と言った。

『似た者同士?』
「そういうことだな。」
『…二へへ。』
「変な笑い方。どうかした?」
『典明に言われたくない。うん、嬉しいなって。』
「……」

典明が黙って私を見るから、どうしたのかと思ったら、頭を撫でられた。それからは、典明はよく私の頭を撫でてくれた。私はそれがすごく好きだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ