リクエスト

□杞憂と杞憂
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揃って風呂から上がり、体を拭いてから寝間着を着て髪の毛をドライヤーで乾かす。風呂上がりで乾いた喉を潤すべく冷蔵庫の中に入れてあるミネラルウォーターを取り出しコップ2つに注ぎ、1つを妻、名前に渡し、飲む。そして歯を磨く。
ここまではなんてこともない、普通のことだ。
軽く息を吐いて、横にいる名前を見下ろす。名前はこれからすることに緊張しているのか少し顔を赤くして俯いている。久しぶりなのだから仕方ないことなのだが、俺たちはもう夫婦だ。まぁ、いつまでも初心なのも可愛いが。

「名前」
『!』

愛しい妻の名前を呼ぶと、身体をビクつかせ、まるでギシギシと錆びたものを無理矢理捻るかのように、こちらの方に顔を向けた。相変わらず顔を赤くしている。

「緊張しているのか」
『…!…ゃ、その…うん…』
「そう身体を固くするな。風呂に入る前も言ったが、取って食うような真似はしねぇ。名前が嫌というならちゃんと止める」
『…承太郎はさ…』
「…?」

俺の名前を言うなり、また何かを言いたげにして俯いてしまった。

「…名前?」
『…承太郎、いつも優しくしてくれるよね。今日だって、私のワガママに付き合ってくれて…。すごく嬉しいの。でも…今日は承太郎の…その…好きにして、ほしいな…なんて…』
「つまり、名前は俺にめちゃくちゃにされたい、と」
『そ、そんなこと言ってない!』

また名前は顔を赤くして俺をポカポカと叩いてきた。所詮女の力だから全く痛くはないが。

「まぁそこまで言うなら、俺も手加減はしねえぜ?」
『あ、えっと…少しは手加減してほしいかな…』
「やれやれだぜ」
『あはは…』

普段ワガママも言わない、欲というものはないのかと思っていた名前がこんなにも俺を欲しているのだ。この上ない幸せだ。
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