【私家版】宇宙戦艦ヤマト

□第10話 妙手
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 銀河系を離れて、真の意味で未知の空間を航行しているヤマトの先に、数多くの物体が浮かんでいる。
「多数の未確認物体発見、700倍の倍率でメインスクリーンに切り替えます」
 太田が報告後、映像をメインスクリーンに切り替えるとそこに、放射線状に突起物を8本付けている球体が、雲霞のごとく並んでいるのが確認できた。
「なんだ?もしかしてガミラスのものだろうか?」
 古代の疑問は第一艦橋のメンバーの誰もが思ったことであった。沖田もわずかに頷く。
「…おそらくな…真田くん、ダミーボートを出してみてくれ」
「はい!工作班、バルーンダミーを準備、前方の物体に向けて発進させろ」
 ややあって、後部ハッチから細部まできちんと模されている小さなヤマトがリモートコントロールされて発進、本物と同じく後部ノズルからエネルギーを噴射しつつ未確認物体に近づいていった。
「へえ、かわいいヤマトだな」
「本物とそっくりだ。さすが真田さん、凝ってますね」
 古代と島が言うのに、真田が微笑する。
 ダミーのヤマトは未確認物体に近付き、触れた途端にその物体もろとも爆発した。
「機雷か…!」
「ガミラスもヒマなんだな、ご丁寧にこれだけたくさんばらまくなんて」
「まったくだ、航路を少し変えればどうってことないのにな」
 島は言いながら、ヤマトのコースを右へと移して回避しようとする。
 だが。
「機雷群が、こちらの動きにあわせて移動してきます!」
 太田が言うのに、あらためてメインスクリーンで確認すると、確かにじわじわと近付いてきて、同じように右方向へと着いてくる。
「しつこいな。ワープでかわせないか?」
「あんなものが前方にあったら、ワープなんかできないだろ」
 機雷と一緒にワープなんかできるか、と島は古代に言い返す。
「波動砲で消し飛ばした方が早くないか」
「おいおい、こんな距離で主砲だの波動砲だのぶっ飛ばしたらこっちまで吹っ飛ぶじゃないか」
 無茶を言うな、と古代も島に言い返す。
「島、制動をかけろ。下手に大きく動かさん方がいい」
「は、はい、制動をかけます」
 前方のノズルを噴射して、ヤマトを停止させる。
「森くん。あの機雷の間隔を調査してくれ」
「はい」
 雪はレーダー横の計器を操作して、機雷群の間隔を探知する。はじき出されたのは上下左右とも150メートル、というものであった。
「かろうじて、すり抜けられそうだな。島、微速前進であの機雷群の中を突っ走れ」
「了解。微速前進します」
「がんばれよ、ヘボ運転手」
「わかったよ、ノロマ大砲撃ち」
 冗談とも軽い口喧嘩とも言えない会話を古代としつつも、島は操縦桿を握りしめ、スクリーンに提示される障害物の光点…機雷を見遣りながら、ゆっくりとヤマトを前進させていく。
 綱渡りにも似た緊張のさなか、ふと、島は違和感をおぼえた。
「おかしい。前方の機雷の間隔が狭まってきている」
「おいおい、そんな、いくらなんでもヘボと言われたあてつけにしてはシャレに…」
「艦長、後方の哨戒室から、機雷群がこちらに迫ってきているとの報告が入りました!」
 古代の台詞を断ち切るように、太田が報告するのと前後して、雪が「機雷の間隔が狭まってきています!」とレーダーを凝視しながら叫んだ。
「なんだって!」
「くそ、機雷の突起物から電磁波が出始めたぞ!電磁波に触れても爆発する、気をつけろ、島!」
 だめ押しとも言える真田の報告だったが、島は聞こえているのか聞こえていないのか、前方を見据えて機雷群を突っ切ろうとしている。
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