【私家版】宇宙戦艦ヤマト

□第2話 号砲
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 しかし、いつの間にこのような大がかりな戦艦が、しかもどこで建造されていたというのだろうか…
「艦長、質問があります。この艦はもう完成したのでしょうか?」
 古代の問いに、沖田は頭を振った。
「残念だが、まだ完全とはいえない。だが、出発は近い。メインエンジンは君たちが半年前、火星から持ち帰った通信カプセルの設計図を元に、あの宇宙船のメインエンジンを参考にしながら造られた、今までの地球のエンジンとは全く違うものだ」
「それじゃ、あの女の人は…」
 沖田は深く頷いた。
「我々を救おうと、遙か遠くから…命をかけて来てくれた、異星からの使者だったのだ。そして、君たちが持ち帰ってくれた資料のおかげで、この艦は素晴らしい推進力と強度を持つ戦艦となった」
「異星のテクノロジーによるエンジンか…」
 島は操縦者として、あの宇宙船で見た変わったデザインの、小型ながら強力なエンジンの、それよりも遙かに上であろう航行能力を持つであろうこの艦で宇宙に旅立てるのかと思うと期待と興奮でいっぱいになった。
「では、もしかして、ガミラスとも、この艦は互角に戦えるんですか!?」
 戦闘班員である古代は意気込んで沖田に尋ねた。それならば、両親の、兄の仇を討てる。
「おそらく。だが、我々の任務はガミラスと戦うだけではない。それよりももっと重要な目的があるのだ」
「え?」
 古代も島も驚きと共に緊張をおぼえた。
 ガミラスと戦うことよりも重要な目的とは…?
 そう尋ねようとした矢先に、警報が鳴り響いた。
『敵艦載機、地球に全速接近中!敵空母、地球の衛星軌道に停止!艦載機を発進中!』
「ウジ虫どもめ!またこの艦を狙って来たか!」
 抑えてはいるが、感情を露わにした沖田に、古代は内心驚いた。もっと冷徹な、否、冷たい人間だと感じていたのだ。戦士であれば冷静沈着を求められることはわかってはいるが、兄のこともあって、どうしても沖田艦長にはそういった感情などないものだとばかり古代は思っていた。
『敵艦載機、接近!』
 沖田はふたりを見やった。
「この艦には、まだ整備や技術関係の要員しかいない。第一艦橋へ来い!」
「はい!」
 ふたりは沖田の後に続いた。

 第一艦橋に着いた古代と島は、メインスクリーンに映る防衛隊とガミラスの艦載機との戦いに目を見張った。防衛隊もよく戦ってはいるが、叩いても叩いても雲霞のように敵空母から発進してくる艦載機に防戦一方といった様子だった。
 時折、艦自体にも衝撃がはしる。砲火をかいくぐった艦載機がこの艦にも攻撃を加えているのだ。
「艦長!この艦は、この艦はまだ戦えないんですか!」
 たまりかねて、古代が叫ぶ。
 その間にも、防衛隊の被害が拡大していく報告が為されていく。
「艦長!このままでは何もしないうちに使いものにならなくなってしまうじゃありませんか!」
 島もまた、沖田に向かって叫ぶ。
「艦長!」
『敵空母、衛星軌道より離脱、降下しつつあり!』
 だめ押しのような報告がアナウンスされる。
「艦長!」
 沖田は動かない。古代は今すぐにでも外に出て行きたい衝動に駆られていたのだが…
『機関室より、報告!エンジンチェック、完了!』
「よし!」
 ゆらり、と沖田から見えぬ闘牙が閃いたかのようだった。誰よりも応戦の時を待っていたのは、他ならぬ沖田自身であった。
「古代、戦闘部門を受け持て!島は運行部門を受け持て!動力、スイッチオン!エンジン始動!総員戦闘配置につけ!」
「了解!」
 勇躍して古代は砲台の計器とパネルに飛びつき、島は操艦とレーダーのパネルの前に席を占めた。
「出力120%、砲塔動力伝達!」
「主砲方位盤、作動開始!」
 島と古代がそれぞれに報告と指令を出す。
「ショックカノン、エネルギー100%!」
「第一、第二、第三砲塔、射撃準備完了!」
「連動装置、セット完了!」
「ミサイル発射管、準備完了!」
「主砲、安全装置解除!」
 各部門の報告の後に、島と古代が付け加える。
「レーダー、作動開始!」
「全艦、戦闘準備、完了!」
 ふたりの報告を受けて、沖田の指示が飛ぶ。
「砲塔旋回!」
 再び、各部門の報告が乱れ飛ぶ。
「敵空母との距離、10万キロ!」
「方位、右舷30度!仰角22度!」
「各砲連動!」
「測的完了!」
「自動追尾装置完了!」
 沖田は頷き、「主砲斉射!」と下令した。
「主砲、斉射!」
 古代が復唱して伝達する。
 唸るような音を立てて、主砲が沖田の秘められていた怒りのように轟然と火を噴いた。その光条はあやまたず、敵空母に突き刺さる。
『敵空母、爆沈確認!』
「やった!」
 思わず古代と島は躍り上がった。沖田もまた、主砲があのガミラスの装甲を撃ち破る様子に、密かに拳を握りしめる。
 外では母艦を失って慌てふためく敵艦載機が上空へと逃げ出していく様子が伺えた。
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