【私家版】宇宙戦艦ヤマト

□第10話 妙手
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「し、島、停めろ、停めてくれ、ヘボとか言って悪かった、頼む!」
「イヤだ。突っ切ってみせる」
「そんなこと言わずに、な、謝るから!」
「い・や・だ」
 古代はしまった、と思った。兄だからか、常には温和で抑制の効いている島ではあったが、一度怒ると直情径行と言われる自分よりも頑固で言い出したら聞かない性格でもあることを、長い付き合いで知っているはずだったのだが。
「すべての機雷が毎秒2センチごとに、間隔を狭めてきています!」
「すっかり囲まれたか…!」
 太田の報告に、徳川が眉をしかめた。
「島。制動をかけろ」
「は…はい、制動を、かけます…」
 意地になっていた島ではあったが、艦長に命じられては仕方がない。すぐにヤマトを停止させた。
「森くん。これだけの機雷群だ、どこかにコントロールしているものがあるはずだ。それを見つけ出せ。真田くん、コントロール機雷の発信装置を取り除く作業にかかってくれ」
「はい!」
「はっ、了解しました。アナライザー、アナライザー、どこにいる?至急格納庫まで!探索艇に乗り込め!」

 さてそのアナライザーであるが、医務室できわめてご機嫌な佐渡に酒をすすめられていた。
「ロボットが酒を飲んじゃいかん、ということはなかろうが、ほれ、飲め」
「私ニハソンナモノ、必要アリマセン」
「今更気取るな!ほれ、一杯いけ!」
 佐渡はコップに入った酒をアナライザーの頭からぶっかけた。
「水分83%、えちるあるこーる15%…ヒック!」
 頭の部分のメーターすべてがほんのりと桜色に染まった上に、なぜかしゃっくりまでアナライザーはし始めた。
『アナライザー、どこにいる!?』
 真田の怒声に、「アナライザー、仕事のようじゃぞ」と佐渡が告げると、アナライザーはしゃっくりをする度に頭部を桜色に明滅させながら、それでも医務室をあとにして、
「邪魔邪魔、ドイタドイタ…ヒック!ヒック!」
 とたまたま通りかかった乗組員を押し退けるようにして格納庫にたどり着いた。
「オ待タセシマシタ…ヒック!」
「…アナライザー、お前…」
 先に宇宙服を着込んで探索機のコクピットにいた真田は、しゃっくりの度に桜色に明滅するアナライザーにつくづく呆れた。
「なんでロボットが酔っぱらうんだ…」
 佐渡先生も無茶苦茶だが、酔っぱらうロボットの方がもっと無茶苦茶だ。
 叶うならアナライザーの制作者を問いつめたい真田であった。

 その頃、ようやく雪はコントロール機雷の位置を捜し当てていた。
「仰角5度の地点から、通常のものよりも強い反応と異常発信があります!」
「真田くん、ヤマト仰角5度方向にある機雷を探せ。もしかしたら周囲のものよりも突起物が多いかも知れん」
 後部ハッチから発進した探索艇に乗り込んだ真田は沖田からの通信を受けて、仰角5度の方向へと向かう。
「了解!おい、アナライザー、1秒でも早く見つけだしてくれ」
「了解シマシタ…ヒック…ヒック!」
「…大丈夫なのか、本当に…」
 こうしている間にも、機雷はどんどんヤマトに近付いてきている。
「機雷、20センチ接近!」
「だめだ、このままだと電磁波に触れてしまう!」
 太田の報告に、島が叫ぶ。
「真田さん、まだコントロール機雷を発見できませんか!?」
 たまりかねて相原も真田に呼びかける。
『まだだ、待ってくれ!』
 真田の方もイライラしながら酔っぱらいのアナライザーをせっついた。
「まだか、アナライザー!」
「電磁波ガ多クテナカナカ判別デキマセン…ヒックヒック!」
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