【私家版】宇宙戦艦ヤマト

□第10話 妙手
3ページ/4ページ


「艦長、このままでは危険です!」
「島、艦を倒せ」
「え?」
「左、傾斜角度5度、艦を倒せ!」
「は、はい、左に5度、艦を倒します!」
 島の操作で、ゆっくりと、ヤマトは左に傾いた。
「アナライザー、まだ発見できないのか!」
 じりじりと時間が過ぎていくのに、それらしきコントロール機雷の発見にまだ至らないのに、真田もついアナライザーを怒鳴りつけてしまう。
「電磁波トこんとろーる波トノ判別ガキワメテ困難ナノデス…ヒック!」
「早くしてくれ、遅れたらヤマトは爆発してしまうんだぞ!まったく…なんでそんないらんところまで精巧にできているんだお前という奴は…!」

「機雷群、15センチ接近!」
「傾斜角度、プラス5度」
「傾斜角度、プラス5度!」
 再び、ゆらり、とヤマトが傾斜する。
「相原、真田くんからの連絡は?」
「まだ、なにもありません!」
 さすがの沖田にも冷や汗が滲む。
「機雷群、10センチ接近!」
「傾斜角度、プラス5度!」
「傾斜角度、プラス5度!」
「島さん、気をつけて下さい!左舷付近の機雷が接触しそうです!」
 機雷の動向を注視している南部が叫んだ。爆雷や砲弾の飛び交う中でも弱音を吐かない砲術長ではあるが、操舵に頼るしかないこの状況では、自分ではどうしようもないのが実に悔しくもあり、心臓に悪いものでもあるようだ。
 それは古代も同じことで、これが敵の艦載機なりミサイルなりであれば飛び出してでもなんとかするのだが、こうなっては文字通りに切歯扼腕してスクリーンをを見つめているしかない。
(真田さん、アナライザー、早くなんとかしてくれ!)

 機雷群の中を進んでいた探索艇の中で、やっとアナライザーが「異常発信探知」と報告する。
「真田サン、右上方ニアル機械カラ、異常発信ガアリマス…ヒック!」
「ん?あいつか!」
 沖田の言うように、発信機を兼ねている為か突起物が他のものより多く、大きさも若干他の機雷に比べて大きい。
 それに真田とアナライザーは取り付いた。
「ヤマト、ヤマト…!こちら真田。コントロール機雷を発見、只今より解体作業に入る」
 待ち望んでいた報告ではあったが、沖田はまだ緊張を緩めてはいなかった。
「機雷群、再び5センチ接近!」
「艦長、艦を倒すのにも限界があります!」
「落ち着け、島。傾斜角度、プラス5度」
「は、はい…」
 汗びっしょりのまま、島は再びヤマトを傾斜させたが、これ以上は正直にいって、ぎりぎりではないかと思えた。

 コントロール機雷に取り付いたアナライザーと真田は、ひときわ大きな突起物の中から異常発信が為されていることに気がついていた。その突起物を慎重に、まっすぐに、アナライザーは自分が回転しながら外していく。
「取レタ」
「よし、アナライザー、中のコントロール発信装置を止めてしまうんだ」
「了解。ヒック、ヒック!」
 まだしゃっくりをしながらも、アナライザーはコントロール機雷の内部を見回し、強力な信号を送っている部分に気がついた。
「アッタ。コレダ」
 右の指先を伸ばし、カバーをはぎ取ると、左の指先でカバーと本体と繋がっているいくつかのコードから、ひときわ太いコードの連結部分をぶちり、と切り離す。
「任務完了」
 そのコントロール機雷から外された発信装置を、アナライザーは真田の方へと投げ上げた。
「ようし、よくやった、アナライザー、酔っぱらっていても、お前は仕事の出来る立派な奴だよ」
 それを受け取りつつ、真田は正直な感想を述べた。人間では、宇宙服を着込んでいる状態で、ここまで精密な操作ができるかどうかわからない。
「当然デス!ヒック!私ハ、天才!ヒックヒック!」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ