【私家版】宇宙戦艦ヤマト

□第10話 妙手
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 真田からの解体作業終了の報告に、第一艦橋の一同は心底ほっ、としていた。
「機雷群の動きが止まりました!」
「電磁波の停止を確認しました!」
 太田と雪が相次いで報告する。島がため息を深々とついて、ぐったりとシートにもたれかかった。
「やれやれ…これ以上艦が傾いたら、えらいことでしたわい…」
 徳川もふう、と息をついて、額に浮かんでいた汗を拭う。
「真田くん、アナライザー、ご苦労だった。至急、艦に戻れ」
 沖田はそう指示したあと、まだメインスクリーンいっぱいに広がっている機雷を見つめた。
「古代」
「は、はい!」
 いきなり呼ばれて慌てて古代は立ち上がった。
「ブラックタイガー隊員を率いて、あの機雷を撤去してくれ。君たちの手でやるんだ」
「はい、古代以下、我々ブラックタイガー隊員であの機雷を…手で撤去しま…あの、手、ってこの手でありますか?」
 思わず、自分で自分の手を指さしてしまう古代であった。
「そうだ。君たちの手でやるんだ。ただし、機雷がお互いに接触しないように気をつけるようにな。爆発物には違いないのだから」
「は、はい!」

 ややあって、ブースター付きの宇宙服を着込んだ古代や加藤たちが各々に機雷を手で運び始めた。
 元々空間把握能力に優れている戦闘機乗りたちである、また結束や統率もヤマトクルーの中ではトップクラスであり、それゆえにどの機雷をどこまで運べばいいか、また今運んでいる機雷をどちらの方向へ運べば効率がいいか、そして他の隊員が運んでいる機雷と接触したりせずにすむか…
 などということなど、ことさらに指示を出さずとも、実にスムーズに行っている。
『おーい、島、見てるか?すぐ道をあけてやるからな』
 古代がヘルメット越しに通信を送ってくる。
「ありがとう。大変だな」
 島がねぎらうと、古代は笑い声をたてた。
『なんてことないさ、無重力だもの、こんなの軽い軽い。人間の動きには、こいつらまったく手も足も出ないみたいだな』
 やがてヤマトの前や周辺からも機雷が取り除かれ、大きく道が開かれた。
「艦長、航行可能になりました」
「よし、作業班を収容後、艦体を復元しろ」
「はい!」
 労働付きの宇宙遊泳を終えた古代やブラックタイガー隊員たちを収容すると、島は傾斜を元に戻した。
「島、補助エンジン始動後、発進せよ」
「了解!補助エンジン始動!」
「補助エンジン、始動」
 徳川の復唱後に、サブノズルが噴射され、ヤマトは再び航行し始めた。

 と、相原の席に奇妙な通信が入り、それはメッセージとしてプリントアウトされた。
 それと同時に、ぷつり、と一方的に発信源が消えてしまった。
「なんだ…?」
 不審そうな相原の表情が一気に硬直した。
「艦長、ガミラスからのメッセージです!」
「はあ?」
「なんだって!?」
「ガミラスからだと!」
 相原が艦長に見せているメッセージに、第一艦橋のメンバーがわっ、と艦長席の前に集まってくる。
 沖田はメッセージに目を通したあと、相原に渡し、「相原、読み上げろ」と指示した。
「は、はい。『ヤマトの諸君の健闘を称える。ガミラス総統、デスラー』…以上です」
「デスラー?」
「そいつがガミラスの親玉か!」
「健闘を称えるって…まさか見てやがったのか、俺たちが機雷に囲まれてるのを!」
 敵の首魁の名前を知ったことで興奮するやら見世物扱いされたことに腹がたつやら、様々な感情が渦巻く。
 そして、こうしてメッセージを送ってきたということは、こちらの動向を常にガミラスは窺っているということだろう。
 だが、それがわかった上でも、ふつふつと、闘争心が古代の胸に沸き上がる。
「波動エンジン、始動!全速前進!」
 沖田の命令は、ガミラスへの返事に等しいものであった。

 人類滅亡まで、あと311日

続く

ーFADE OUTー
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