セカンドヤマト

□第3話 反逆
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 古代は防衛軍の司令本部にある司令長官の執務室に駆け込んできた。
 厳密には、制止するガードマンたちを振り切って、ノックもなしに飛び込んだ、といった表現が近かったが。
「長官!ヤマトを廃艦にする、というのは本当ですか!」
「君、失礼にもほどがあるぞ!」
 司令が答える前に、参謀総長が古代を遮る。
「ヤマトはまだ戦えます!それを廃艦にするなんて、どういうことなんですか!」
「…防衛会議で決定したことだ」
 司令が静かに告げる。
「なぜですか!僕の動議が原因ですか!?」
「いい加減にしたまえ!ヤマトの栄光を思えばこそ、記念艦としてその名誉を後世に…」
 参謀総長の言葉に、古代はきっ、とその眦をつり上げた。
「お言葉ですが、ヤマトは戦艦、戦う艦(ふね)です!記念だとか、栄光だとか、それでかき消されて形だけの過去のものになってしまうような艦ではありません!」
「君がヤマトに愛着があるのはわかるが、口を慎みたまえ!だいたい、戦う艦ならば、アンドロメダがある。ヤマトよりはるかに強力でなおかつ小型のエンジンで…」
「…人間は黙って計器を見て座っているだけの戦艦、ですか…冗談じゃない!」
 アンドロメダに関しては、真田から少しだが聞かされていた。人員不足を補うために、機関も砲撃も、人の手で動かすのではなく、機械ですべて動かすのだと。
 だがそれは、万一のことがあった場合、すべてがストップしてしまう、という脆弱さにつながる、とも真田は言っていた。
 臨機応変が戦場の常であるはずなのに、それが出来ぬ機械に任せて、どれだけ戦えるというのか。
 やりようはあるだろうが、それには相当な戦術、戦略が必要となってくるだろう。それが確立されぬうちに、戦艦だけを造ってどうするというのか。
 数だけ揃えればなんとかなる、というものではない。もしそうならば一隻で地球とイスカンダルの往復を成し遂げたヤマトはそれこそなんだったのだ、ということになる。
「防衛会議の結果だ!帰りたまえ!長官はおいそがしいのだ!」
 もはや問答無用と悟ったのか、参謀総長はガードマンたちを呼び出して、古代を長官室から追い出した。

 その日のうちに、ヤマトの旧乗組員のほとんどが、地下にある旧地球防衛司令軍の本部に集まっていた。
 一年を経た今、閑散として薄汚れてはいたが、建物自体は頑丈に造られていたため、さほどの傷みは感じられない、その一室で、皆は暗く沈んだ顔でいた。
「…みんな、すまない、俺が、防衛会議で地球連邦の上層部を怒らせたばかりに…」
 古代が頭を下げるのに、皆は口々に違う、と言い出した。
「古代さんが悪いわけじゃありませんよ!」
「宇宙の果てのことなんかどうでもいい、って思ってる連中の方がどうかしてる!」
「…地球に直接被害が及ばないと、わからないんだろ、きっと…」
「それじゃ手遅れになりかねない、ってことがなんでわからないんだ!」
 南部や太田や相原たちが言うのに、集まった乗組員たちは頷いている。
 雪はそんな彼らを少し離れたところから見つめていた。
(…古代くん…)
 雪には、予感があった。ひどく悲しい予感。
 と、皆が集まっている所へ、ただひとり、藤堂司令長官が黙って歩いてやってきた。
「…ここだと思ったよ…私も、たまにここに来るんだ…」
 一同が敬礼する中、藤堂もまた、どこか寂しげに周囲を見渡している。
 ヤマトの廃艦だの記念艦だの、ということは、長官も本意ではない、ということが皆にはわかっていた。
 だからこそ、次の長官の言葉に一同はまた驚かされた。
「古代進、明日15時、木星ガニメデ基地への出航を命じる!」
 続いて、長官は島の方を向き直った。
「島大介、明日14時、火星基地への出航を命じる!」
 古代は愕然とした。
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