セカンドヤマト

□第6話 遭遇
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 ヤマトは太陽系外へ向けて順調に航海を続けていた。先日のアンドロメダ以外に追撃はなく、むしろ木星や土星の衛星にある基地に勤務していた旧乗組員が続々とヤマトに乗り組みを希望して、人材が揃っていった。
 そして、ヤマトが冥王星の基地においても旧乗組員を迎え入れた頃。
 司令本部からの通信が入り、メインスクリーンに映った藤堂長官に、一同は敬礼した。
『ヤマトの諸君。どうかね、訓練航海の調子は』
 この第一声に、一同は一瞬虚をつかれた。
「は?」
 思わず古代の口から間の抜けた声が出る。
『ん?先日の防衛会議でヤマトの苦難の旅を後進に伝え、実戦に活かす経験を積ませるために、君たちは防衛会議での決定の下、後輩たちや空間騎兵隊と共に訓練航海中ではなかったかな?そうだったね、参謀総長?』
 傍らに映る参謀総長が、冷や汗を流しつつ『は、はい、おっしゃるとおりです』などと言っている。
「あ、あの、長官…?」
『そうそう、太陽系外だけでなく、銀河系のコンタクトラインぎりぎりまで監視衛星を敷設する計画の為の下見でもあったね。今のところ、何か問題は起こっていないかね』
「な、何も、今のところは、起きておりませんが…あの、長官、それはいったい…我々は…」
 廃艦にするといわれたヤマトに、辞表を叩きつけて乗り込み、命令を無視して地球を飛び出した。
 反逆者というレッテルをつけられても。
 そのはずではなかったか。
『…軍部としては、今までの衛星数で充分ではないか、という意見が多かったのだが、今後、宇宙の平和を担うリーダーとしての役目を果たすには、戦力だけでなく、情報収集や策敵にも力を注ぐべきであると、大統領閣下もお考えになっているとのことで、それなら《たまたま、偶然に、訓練航海の予定の》ヤマトに衛星の敷設箇所にふさわしい宙域の調査を命じたはずだが…このように、ね』
 長官の手元には、ヤマトが飛び立った日付の付いた命令書が、長官のサインと共にそれらのことが記されている。
「…長官…」
 自分たちが地球を飛び立った後に何があったかはわからないが、またしても軍部と文官との間で防衛会議や地球連邦内における主導権を巡っての綱引きでもあったのだろうか?
 その中で、軍部はヤマトの反乱を訓練航海としてすり替え、なおかつ衛星の増産、新規の配備と敷設、といった文官の意見との『おとしどころ』として、そのような『命令書』が作られたのではないだろうか。
 政治のパワープレイの駒に使われた感は否めないが、自分たちを、ヤマトを守るために長官はおそらく、手を尽くしてくれたに違いない。
「長官、それでは、我々は…」
『うむ。《命令》に従って、粛々と任務を全うしたまえ』
「はっ!」
 一同は再度、敬礼する。
『…こちらでも彗星が徐々に大きく見えてきている。ヤマトも充分に注意し、なにかあれば、ただちに報告するように』
「はいっ、長官、ありがとうございます!」
 長官は重々しく頷いて通信を終えたが、その目にどこか、嬉しげなものがある。
「我々のこの旅が『命令』って…」
「それってつまり、俺たちはもう『反逆者』じゃない、ってこと…だよ…な?」
 期せずして、歓声があがった。
「やった、俺たちはもう、『反逆者』じゃないんだ!」
 ひとつの懸念が払拭されたことは、やはり嬉しい。だが、そのためにどれだけ長官が骨を折ってくれたのだろう、と思うと感謝の気持ちと共に、申し訳ない気もしてくる。
「おいおい、そんなに喜んでばかりもいられないぞ。杞憂だった方が平和で良かったんだからな。それに…」
 真田が冷静に釘をさす。
「司令のおっしゃるように、彗星はやはり、近づいてきている。あの謎の通信が全然入ってこないのは、もしかしたらより強力に妨害されているからなのかも知れんぞ」
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