セカンドヤマト
□第8話 旧敵
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古代は思わず、その空母の映像を凝視した。
「…ガミラスの…残存艦隊…か…?」
それはあったとしてもおかしくはない。
ガミラスは星としては寿命を迎えつつあったが為に、移住先を求めて地球に狙いを定めたという。
ならば、銀河系以外へも調査や侵略などを行い、そのための艦隊がいくつか残っていたとしても不思議ではない。
ただ、なぜ、今になって…という印象が拭えない。
(まさか…万全の態勢を整える時間をかけていたとでもいうのか!?)
だとしたら、それを為すには、統率者が必要だ。
あちらこちらへと分散されていたであろうガミラス軍を召還し、まとめ上げ、自分たちが、ヤマトが宇宙に現れるまで待機させるだけの、それだけの器を持つ者が…
『右舷装甲、損傷!』
被害を伝える報告に、古代は我に返った。
「主砲発射用意、目標、左舷、敵空母!」
その時、いきなり無重力状態が回復した…と思った次の瞬間、今度は身体を押さえつけられる。
佐渡の秘蔵していた酒瓶が次々に割れて、乗組員は今度は床に伸ばされてしまった。
「!」
ぐぐっ、と圧される重力は、通常の2倍以上の数値を重力コントロールパネルが示している。
「新米、しっかりしろっ!」
床にあえなく伸びてしまった新米を、自分も床に手をつきながら、必死に重力コントロールのパネルに向かいながら真田が叱咤する。
「そ、そんなこと言ったって…無理ですよう…」
新米だけでなく、大半の者が圧迫されて身動きできない状態になっている。
機関室に戻ろうとしていた雨水も膝立ちになって立ち上がろうとしながら、「どこのヴァルナ星だ…」などと、よくわからない毒づき方をしている。
「くそう、どこだ、故障は!俺が直してやる!」
と、斉藤は床を這いずりながら吠えていたが、門外漢の彼に、もちろん直せるはずもない。
「新米くん!」
ぐいっ、と新米の腕をコントロールパネルのところまで、雨水が引き寄せる。そして不敵に笑いながらこう告げた。
「真田技師長、パネルを開けるだけなら、自分にも出来ます」
「そうか、頼む」
真田は雨水の度胸と怪力ぶりは聴き及んでいたので頷いた。
パネルの普段より2倍以上重いカバーを、雨水はなんとか持ち上げる。
「さ、新米くん、あとはあなたの仕事ですよ」
「ふぁい、雨水さん…」
新米は片手をなんとか開けられた重力コントロールのパネル内部に手をかけ、真田は故障箇所を額に汗を浮かばせて素早く見やる。
宇宙蛍に食い破られている箇所はすぐに見つかった。思うように動かない腕をなんとか動かして、応急処置を施す。戦闘中のことということもあって、それもやむを得ない、という判断だった。
一方、敵の空母はゆっくりと猫がネズミを舐めるように見るが如く、爆撃に晒されてろくに反撃のできないヤマトを横目にしながら、悠々とヤマトの正面にやってきた。
波動砲を撃つことも出来ないだろうということを知っているかのように。
(くそっ、宇宙蛍についてもっと警戒していれば、こんなことには…!)
流れてきた時点で回避しておけば、こんな状況にまで陥ることはなかったはずだ。つくづく、自分の浅慮が古代には腹立たしい。
呼吸が苦しくなる中、古代は空母のミサイルの発射孔がすべてこちらに向いていることに酸素不足で朦朧としている視界で認識し、背筋が冷たくなってくるのを感じた。
と、その呼吸を圧迫する重力が、ふっ、と軽くなる。
『こちら、真田、重力コントロール装置、修理完了』
真田のスピーカー越しの声がまだ、辛そうな息遣いだ。だが、艦内はようやく落ち着きつつある。
「主砲発射用意、目標、前方敵空母、方位修正…ん?」
なぜか、敵空母がいきなり反転し、逃げるように慌ただしく去っていく。
「あっ!」
不意に雪が驚愕の声を上げた。