セカンドヤマト

□第9話 艦長
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 小惑星から脱出は出来たものの、左舷前方にはガミラス艦隊、なによりデスラーの乗る旗艦が健在だ。
 古代は臨戦態勢を解かず、波動エンジンの波動砲から通常へのエネルギーへの移行を待って、主砲発射準備を指示するつもりでいたのだが。
「!」
 なぜか、ガミラス艦隊がデスラー艦と共に反転していくのがメインスクリーンに映し出されていた。
「まさか、また宇宙蛍か!?」
「いえ、周辺には宇宙蛍は確認出来ません」
 雪の報告に、島が首をかしげる。
「じゃあ…どうして?」
「…罠かも知れんな…どうする、古代、追撃するか?」
 真田の問いに、古代は押し黙った。デスラーという男を推し量るに、少なくともまだ余力のある状況で撤退などしないはずだ。
「謀略に長けた男のようじゃからな…確かに罠を仕掛けておるかも知れん…そもそもあの小惑星も、奴らの仕組んだものだったんじゃろう」
 徳川が遠ざかっていくガミラスの艦隊の映るメインスクリーンを気難しげに睨む。
「とにかく、次は損傷箇所の修復に取りかからないと…」
 と、真田が言いかけた時、特徴的な波形の通信が入電されてきた。
「例の、メッセージです」
 島が勢いよく立ち上がるのに、相原は慣れた調子で通信席を離れた。
「こちら、ヤマト、宇宙戦艦ヤマト、航海長、島大介!」
『……私は……のテレサ…テレザートのテレサ…ヤマトの……さん…』
「テレサ?それが君の名前か?テレザートという所が、君のいるところなのか!?」
『……もはや一刻の猶予も……巨大な……彗星は……』
「テレサ、君のいる所はどこにあるんだ、教えてくれ!」
『……11時の方向……ただし…艦隊と…』
 また、通信が途切れてしまった。
「11時の方向…上下角…プラス2度…」
 なんとか島が読みとれたのはそこまでだった。
「くそっ、妨害電波を流している艦隊が、やはりテレザートというところにいるな!」 
 苛立たしげに通信機のコンソールに島が拳を叩きつけるのに、相原の顔がひきつる。
「落ち着けよ、島。どうやら彼女は艦隊だけでなく、他のことにも注意を促してくれているようだぞ。もしかしたら、宇宙蛍のことも知らせたかったのかも知れない」
 いつもとは逆に、古代が島を宥めている。
「…とにかく、11時の方向に進むしかないな…猶予がないと、テレサも言っていた。ワープに最適な場所の測定にあたる」
 島が言うのに、サブパイロット席から立ち上がった斉藤が「またワープかよ…」とげんなりした様子で小さく呟いた。
「…うん、頼む、島…」
 言いながら、古代は思案顔だ。
「?どうした、古代」
 修復作業の指揮を執るために立ち上がった真田が、それに気がついて声をかけてきた。
「…真田さん、僕は先ほどのことで、自分がいかに未熟であるか、思い知らされたんです」
「古代?」
 皆も不思議そうに古代を見つめた。
「宇宙蛍にしても、今回の小惑星にしても…」
「いや、それは…宇宙蛍については思いがけないことだったし、小惑星にしたところで、充分に調査したじゃないか」
「そうだ。小惑星に関してなら、俺にも責任がある」
 島と真田が、自分を責めているらしき古代に、ひとりで背負うことはない、と励ますように言う。
「それに、まさかデスラーが生きていたとは思わんかったからな。ヤマトのことを知っている、ガミラスのデスラーの偽装が上手だった、ということじゃろう」
 徳川も穏やかに口を添える。
「それなんです。俺は、デスラーが生きている、ということに対して、今でも動揺しているんです」
「いや、それなら俺たちだって、なあ?」
 南部が同意を求めると、太田や雪や相原も頷いた。
「…ですが、艦を預かる人間が、そんな過去の幻影に怯えているような人間でいいとは思えないんです。俺は艦長代理であって、艦長ではない…」
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