セカンドヤマト

□第10話 采配
1ページ/5ページ


 ヤマトはワープを重ねて一路、テレサのいるテレザートへと向かっていた。
 それとともに、彗星も大きく見えはじめ、それが近づきつつあることが、ヤマトは勿論地球からも充分に観測できるほどになっていた。
 テレサの言うように、一刻の猶予もない…あの彗星が良からぬ意図、思惑、もっといえば…地球の平和を乱し、侵略することを目的としていることは、その巨大な彗星がデスラー率いるガミラスの残存勢力と繋がりがある以上、もはや確定事項といってよかった。

 ヤマトはおそらくこれがテレザートへの最後のワープになるであろうという位置まで来ていた。
 相変わらず妨害電波で不明瞭ではあるが、テレサからのメッセージの発信源を島が読みとり、会話を交わし、といったことを続けて、銀河系のほとんど端にある恒星系の中の惑星のひとつがテレザートであるというところまではわかった。
「波動エンジン、異状なし!」
「ワープ自動装置、セット・オン!」
「ワープ一分前、各自、ベルト着用!」
 土方を艦長としてはいるものの、最初に土方が言ったように、彼が何かを指示する、ということは殆どといっていいほどなかった。
 古代たちと共に、第一艦橋で、艦長席ではなくサブパイロット席で、ただ、座り…時折現在地の確認と、彗星の動向を島や真田に尋ねては、何事か考えていることが多かった。
 ワープに関しても特に口を挟むことなどなく、今も古代の指示にベルトを着用し、目を閉じている。
 カウントダウンの後、古代の「ワープ!」の指令の下、島が復唱してワープのスイッチを押す。時空をねじ曲げ法則を破り、次元を超越して…
 乗組員たちに二日酔いと乗り物酔いとが一度にきたような、精神的にも肉体的にも負荷のかかる、だが航行には不可欠な試練を越えて、ヤマトは再び元の宇宙空間へと姿を現した。
「ワープ終了!」
 島が声を上げる。
「波動エンジン、異状なし」
 パネルを見つめて徳川が告げる。
「艦の損傷を認めず!」
 真田もまた、パネルを確認して報告した。
 やれやれ、といった安堵の空気が漂った、その直後だった。
 不意に、振動がヤマトを襲った。
 ずしり、と重い振動と共に、メーターが振り切り、パネルが異常を関知して明滅する。
「恒星並の重力、探知!大量の隕石が流れています!」
「隕石群が流れていく方向に、ヤマトも流されています!」
 雪と太田の報告に、真田が「宇宙気流か…!」と呻くように言うや、素早くパネルを操作して計算を始める。
 どこかにあった恒星、あるいは恒星並の質量を持った惑星が、徐々にではなく一度にその死を迎えた際、その空域のバランスが崩れ、他の恒星の重力に引かれるように、かつて星であった名残の岩石と、残された矮星の重力とが干渉しあい、周囲のものを一方向に押しやる流れができる。
 時には恒星を巡っていたはずの惑星、それも木星さえ凌駕するほどの大きさと質量を持っている惑星さえもが、軌道を外れてその過程で崩れ落ち、その残骸を以て強力な流れを作り出すことさえある。
「これはまだ序の口だ、先に強力な本流があるぞ!」
 真田の警告に、第一艦橋の空気がより張りつめる。
「島、コースターンしたらどうだ!?」
 古代の言葉に、島は怒鳴るようにこう言い返してきた。
「ターンしても同じだ!このまま支流を突っ切る!機関長、エネルギー増幅!」
「了解、エネルギー増幅、フルパワー、噴射用意!」
 徳川の指示が機関室に飛び、機関班員たちが慌ただしく操作すると、波動エンジンは野生動物が威嚇するかのような音と共にフル回転し始めた。
「出力全開、最大戦速!」
 支流の中を、ヤマトは隕石群…今は岩石群と言った方がいいのかも知れないが…それらと共に押し流されつつ、また、ぶつかりながら、全力でもがいていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ