夢小説(短編)
□ウソホント
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小姫は、才蔵の嘘が見抜けるらしい。
佐助くんが幸村様に話し、幸村様から信玄様へと伝わり――
そのことを聞いた幸村様と信玄様の驚きようは、私の想像を遥かに超えるものだった。
「俺でも見抜けないのに…。小姫はすごいな」
幸村様が感心して呟くと、信玄様も同意するように頷きながら笑う。
「あいつの嘘が見抜けるとはな。くのいちの才能、あるんじゃねぇか?」
「い、いえ、そんな…」
ひとしきり褒められて恐縮した後、恐る恐る本題に入る。
「それで、信玄様。本日はどのようなご用件で…」
「本当、何の用なのさ」
私の声に、ため息交じりの声が重なる。
驚いて声のする方向を見上げると、すぐ隣に才蔵さんが立っていた。
いつの間に…。
いつものことながら、全く気配を感じさせないその身のこなしに感心する。
「おう、丁度揃ったな」
私と才蔵さんの顔をそれぞれ見比べると、信玄様はにやりと笑う。
「折角だから、お手並み拝見と行こうじゃねぇか。小姫、ここに座れ」
そう言って信玄様は、自身の座っているすぐ右隣の畳をとんとんと右手で叩く。
「は、はい」
信玄様の命に逆らう訳にもいかず、指定された場所へそそくさと移動する。
そこからさらに人一人座れるほど離れた場所に幸村様が座っているため、その場所に座ることで、左右を信玄様と幸村様に挟まれる形になる。
「何これ。尋問…?」
三人と向かい合う形になり、才蔵さんは視線を右斜め下に向けながら、気だるげに呟く。
「まあそんな堅苦しく考えるな。お遊びみてぇなもんさ。俺と幸村が才蔵に質問して、その答えが真か嘘か、小姫が判定するって訳だ」
そんなことをするのか。
信玄様の言葉に驚きながら、才蔵さんを見つめる。
私はともかく、才蔵さんは嫌がるんじゃないかなぁ…。
才蔵さんは無表情のまま、信玄様をまっすぐ見つめている。
「ふーん…。それじゃ、俺はほんとのこと言おうが言わまいが、自由ってこと?」
「そういう訳だ。むしろ、入り混ぜてくれなきゃ面白くねぇ」
「その答えがほんとか嘘か、正解教えないけどいい?」
「ちょっと待て、才蔵。それじゃ判定の真偽が不明なままじゃないか」
慌てて幸村様が口を挟む。
「いちいちこれがほんとでした、嘘でした、なんて、面倒くさくてやってられないよ」
「おい、才蔵!俺はともかく、御屋形様に失礼だろう!」
「まあまあ幸村、いいじゃねえか。小姫の腕を信用すれば問題無いだろ?それで行こうか」
信玄様の言葉に幸村様がしぶしぶ頷き、どこか妙な質問合戦が始まった。