夢小説(短編)

□ウソホント
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俯いたまま困っていると、不意にポンと、頭に優しく手が乗せられる。

「はいはい。そろそろ小姫からかうの、終わりにしてくれる?」

すぐ真上から聞こえるその声に、ほっとして思わず涙が出そうになる。

「それって一応、俺の特権だからね」

「あっ!?」

声を発し終える前に、才蔵さんに抱きかかえられた状態で、いつの間にか廊下に移動していた。

「ほんと、悪趣味…」

ため息交じりのその言葉に、自分が責められているような気がして、慌てて頭を下げる。

「ご、ごめんなさい、才蔵さん…」

「お前が謝る必要ないでしょ。お前の『能力』を口実に、俺たちをからかって遊ぼうとしていただけだろうし」

「そうなんですか?」

「多分ね」

そうだったのか。
確かにそうなら、先ほどの信玄様の笑みにも質問内容にも納得が行く。

「でも、その…はっきりと私の作った団子が大好物って言っていただけて嬉しかったです」

その言葉と笑みを向けると、どこか困ったような笑顔が返される。

「そんなの今更だと思うけど。それに…」

端正な顔が、すぐ目の前まで迫る。

吐息で前髪が揺れてしまいそうなほど近くで、そっとその唇が開いた。

「小姫…気にすべきはさ、その次の質問でしょ?」

「!?」

一瞬で顔が朱に染まる。
その顔を眺めながら、才蔵さんが目を細める。

「あーあ。真っ赤に熟れて、食べ頃…。ほんと、食べて欲しいの?」

「わ、私は食べられませんっ!」

「そういうこと言うんだ。じゃ、実践してあげる」

「!?さ、才蔵さん、どこ連れていく気ですか!?お、降ろしてくださいっ…!」


おしまい


これもある意味10話ネタ?
前よりちょっと甘めにしてみました。
状況的にはあり得ない設定かもしれませんが。
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