夢小説(短編)

□続・愛ある仕返し
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それから暫く時間を置いて、団子を載せた皿を持って才蔵さんの部屋へと向かう。

「才蔵さん、小姫です」

襖の前でそう声を掛けると、すぐに「入りなよ」と声が返って来る。

「失礼します」

襖を開けると、着物に着替えてくつろいだ様子の才蔵さんが目に入る。

部屋の中へと入り、才蔵さんの前に団子の載った皿を置きながら、その顔を見上げる。

「お団子、先に召し上がりますか?」

「耳かき、したいんでしょ?そっちが先でいいよ」

「それじゃあ、お言葉に甘えて…」

そう言いながら、懐から耳かき棒を取り出す。
取り出した瞬間、何故かくすくす笑われた。

「ほんと、肌身離さず持ってるんだね」

「い、いいじゃないですか、もう…。とにかく耳かきしますからね!」

「はいはい。じゃ、また膝枕?」

「はい。あ、上を向かないでくださいね?初めからちゃんと、横を向いてください」

前回の反省を踏まえてそう言うと、才蔵さんが苦笑しながら私の膝に頭を載せる。

意外とちゃんと、横向きになってくれた。

そのことにほっとしながら、才蔵さんを見下ろす。

本当は私のお腹の方を向くのではなく、反対を向いて欲しかったのだけれど、そこは我慢しよう。

今回は、何事も無く成功しそう。

思わず頬が緩む。

「それじゃ、始めますね」

笑顔のまま、私は耳かき棒を強く握り締めた。


「どうですか?才蔵さん」

「別にへーきだけど」

「………」

微妙な反応に、思わず手が止まる。

気持ちよくないのかな。
痛くないのかな。

下手では無い、と思うのだけれど。

「心配しなくても、別にそのまま続けて大丈夫だよ。万が一血が出ても、俺なら我慢出来るし」

「そ、そういうことを言われると、余計に心配になるじゃないですか…!」

別にこれは拷問ではなく、気持ち良くなってもらうためにしていることなのに。
痛いと思うのなら、我慢されては困る。

「痛いときはちゃんと、痛いって言ってくださいね?」

「はいはい」

取りあえずそのまま続けたものの、耳かきをしている間、才蔵さんは微動だにせず、一言も声を発しなかった。
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