夢小説(短編)
□愛しの君への贈り物
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「で?」
「え?」
「その箱、どうして小姫が持ってるの?」
才蔵さんの視線が、寄木細工の箱へと向く。
「こ、これは、その、佐助くんが見つけて…」
言い訳するようにしどろもどろそう言うと、才蔵さんが小さくため息をつく。
「勝手にすみません…。その、私にってことで、良かったですか…?」
「違うって言っても、苦情は受け付けないんでしょ?」
「あ、あれは冗談です!」
慌ててそう言うと、くすくすと笑われる。
「ふーん?じゃ、俺が返せって言ったら返してくれる?」
「それは……」
どう言おうか迷った挙句、真っ直ぐその顔を見つめて口を開く。
「嫌です。返したくありません」
私のその言葉に才蔵さんは小さく笑うと、ぽんぽんと優しく頭を叩かれる。
「小姫にだよ。あげる」
「本当ですか?ありがとうございます!」
嬉しい。
私にだということが。
でもそれ以上にこうやって、お礼を言えることが嬉しい。
「ほら、貸して。付けてあげるから」
差し出されたその手に素直に髪飾りを載せると、頬を撫でるように髪を少しだけ掬い上げ、髪飾りを付けてくれる。
左上に感じる重みが嬉しくて、また笑顔になる。
「でも才蔵さん、本当に器用なんですね。あんな箱を作っちゃうなんて」
「ああ、箱も、ね」
「え?」
箱『も』?
じゃあもしかして、この髪飾りは。
「これは、小姫に似合うように作ったから。…やっぱり似合う」
優しく笑うその顔に、嬉しさと恥ずかしさが入り混じり、自然と顔が熱くなる。
「あ、ありがとう、ございます…」
真っ赤な顔になりながらそう言うと、楽しそうに笑われる。
「ごめん、少し訂正」
そう言って才蔵さんは、私の耳元にそっと口を寄せる。
真っ赤になった小姫に、良く似合うよ。
触れる吐息とその言葉に更に赤くなるのを自覚しながら、幸せをかみしめるようにそっと、小さく笑みをこぼした。
おしまい