半蔵
□離れない
1ページ/1ページ
「離してくれませんか」
「嫌です」
「…後悔、しますよ?」
「後悔するのなら、しなかったことを後悔するより、したことを後悔したいです」
「…困ったな」
そう言って半蔵さんは、困り顔で小さく笑う。
「離れたくない気持ちは、小姫さんと一緒です。しかし…貴女を不幸にはしたくない」
「そう思うのなら、お傍に置いてください。半蔵さんと離れたらもう、今の私は、それだけで不幸だから…」
半蔵さんは、ふうと小さくため息をつく。
「…私の負けです。全く、貴女には敵わない」
その言葉と笑顔が嬉しくて、目の前の胸へと飛び込む。
「…幸せにするというお約束は出来ませんよ?」
「大丈夫です。だって…」
目の前の顔を見上げて、ニコリと笑う。
「私が、半蔵さんを幸せにしますから!」
苦笑交じりの笑顔と、優しい抱擁が返って来て。
今はただ、その温もりにそっと身を委ねた。
おしまい