家康夢

□好きって言って
1ページ/1ページ




「そろそろ言う気になった?」

「言いません」

「ふーん?意外としぶといね」

そう言って家康様は、どこか冷たい笑みを浮かべる。

「たった二文字だろ。それを口にするだけで、お前は自由になれるんだよ?」

「気持ちの籠らない言葉に、意味などありません」

「それなら籠めればいいだろ、気持ち。だから―――」

そっと耳元で囁かれる言葉に、びくりと身体が震える。

「早く俺を、好きって言えよ」

「……嫌です」

「しぶといね。そういうとこ、嫌いじゃないけど」

真っ直ぐこちらを見下ろす視線を、負けじと見つめ返す。

「家康様が、言ってくれたら言います」

「はあ?何を…」

「私を好きって認めてください」

「…何さ、それ。調子に乗るなよ?」

決して、調子に乗っている訳じゃないけれど。
少しだけ動揺している。
そう感じる、家康様のその表情に笑みを返す。

「言って欲しいのでしたら、ご自分からおっしゃってください」

「ち、調子に乗るなっ!」

目の前の、少し赤く染まった頬が嬉しくて。
その肩に手を添えて、そっと背伸びをして耳元に口を寄せる。


「好きです、家康様」


不意打ちの告白。
真っ赤に染まった耳が、その成功を告げている。

「な、何を…!」

「言えって言ったのは、家康様ですよ?」

「…殺されたいの?お前」

「私、ちゃんと言いましたよ?家康様もちゃんと好きって言ってください」

「い、言う訳ないだろっ!ばーか」


おしまい

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ