夢小説(短編)

□明日天気になあれ
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「はははっ!小姫、何だよそれ〜!」

そう言いながら佐助くんは、お腹を抱えてけらけら笑う。

「変かな?愛嬌があって、可愛いと思うけど…」

自分の手にあるそれを、まじまじと見つめる。
ぐるぐると大きな目。
にこりと笑った口元が愛らしく、可愛いと言えなくもない。
…と、私は思う。

「そっかー。てるてる坊主って、それでおてんとさまを笑わせて、晴れにするってやつなのかー」

ひとしきり笑った後、納得顔で佐助くんが頷く。

「いや、うん。そういうものではないんだけど…」

でも何だかそう考えた方が、より効果的な気もする。

「何でも、楽しい方がいいものね。おてんとさまが間違って出て来ちゃう位、面白いのを作ろう!」

「任せとけっ!」

不意に二人で始まった、てるてる坊主作り。
これで一度も外れたことが無いという才蔵さんの、「明日は雨」宣言を覆せるのかは分からないけれど――。
どんなに可能性が低くても、出来ることは何でもやりたい。

「これをこうしてっと」

佐助くんが手に持った筆を、白い布地上に大胆に滑らす。

「おお、上手!」

歳の割に手先が器用なこともあり、整った形の、きりりとしたてるてる坊主が出来上がる。

「でも、何かこれ…」

既視感を感じるその姿を眺めていると、佐助くんが大きく胸を張る。

「てるてる幸村様!強そうだろ!」

「うん、すごくそっくり!」

くすくす笑いながら、そのてるてる坊主を眺める。

「雨雲なんかさ、吹き飛ばしちゃうよきっと!」

「ふふふ。本当、そうだね。普通のてるてる坊主より威力ありそう」

きりり眉毛のてるてる坊主にそっと触れると、頼もしげにゆらゆら揺れる。

「おれさ、花見なんて行ったことないから…」

少し寂しそうにうつむいてそう呟いた後、佐助くんは顔を上げてにこりと笑う。

「先生や幸村様や小姫、みんなで花見に行くの、すっごく楽しみ!」

きらきらしたその笑顔に目を細めながら、力強く頷いて微笑む。

「うん。お花見、絶対皆で行こうね。お団子も一杯作るから!」
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