夢小説(短編)
□明日天気になあれ
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何個目かのてるてる坊主を手に持ちながら、力尽きて眠ってしまった佐助くんの体に、そっと布を掛ける。
「…お花見、行くぞ、小姫…」
むにゃむにゃと呟くその寝言にくすりと笑い、そっとその髪を優しく撫でる。
「お花見、行きたいね。みんなで…」
そして――――
「……才蔵さんと、行きたいな………」
って、何口走っているんだろ、私。
思わず声にしてしまった本音に、辺りを見回してしまう。
しんと静まり返った部屋には、時折佐助くんの寝息と、遠くからの宴会の声がかすかに聞こえるだけ。
辺りに誰か人のいる気配は何も無い。
何も無いんだけれど……。
誰に聞かれたという訳でも無いけれど。
純粋に皆で花見に行きたい佐助くんと違い、何とも自分の考えが邪な気がして、思わず頬が熱くなる。
もし明日、晴れたとしても。
花見に才蔵さんがいなければ、楽しいと思えない妙な自信がある。
「やだな、もう、本当……」
自覚したら、止められない。
何とかその思いを払拭しようと、黙々とてるてる坊主作りを再開した。