夢小説(短編)
□その優しさ大迷惑
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えっ、何?
私、そんな変な顔してるの!?
「す、すまない、弥彦…。その、相当具合、悪いみたいだな…」
しどろもどろ、幸村様はそう呟く。
真っ赤な上に涙で濡れたこの顔を、素直に具合が悪いせいだと思ってくれたらしい。
「い、いえ、こちらこそ…。折角来ていただいたのに、このように男として情けない顔を見せてしまい、申し訳無いです…」
さりげなく、男を強調する。
幸村様はうんうん頷き、優しい眼差しをこちらに向ける。
「具合が悪いのだから仕方の無いことだろう。気にするな」
「優しいお言葉、ありがとうございます」
小さく微笑んでそう言うと、また幸村様はほんのり顔を赤くする。
その態度に、急に不安になる。
何だろう。
もしかして具合が悪いせいで、いつも以上に『男』になりきれていないのだろうか。
「あ、えーと、とにかく弥彦、あれだ」
照れ隠しなのか、幸村様の口調がどことなく早口になる。
「着物を脱げ」
「え……えええええっ!?」
あまりに予想外の言葉に、思わず声が裏返る。
何で?どうして?
そんなの、無理…!!
ギュッと掛け布の端を握り、困惑しながら幸村様を見上げる。
「そ、その、別に、や、やましい気持ちからとかではなくてな…。って、男相手に何言ってるんだ、俺は…」
後半はぶつぶつ独り言のように呟きながら、幸村様はすぐ後ろに置いていたらしい桶を、自身の右横へと持ってくる。
その桶に布が掛けてあるのを見て、何となく状況を察する。
「ずっと寝ていて汗をかいただろう?きちんと拭いて着替えた方が、病の治りも早い」
気遣いは有難い。
正直、汗もかなりかいているので、布で拭くこと自体は大歓迎だ。
でもしかし、まさか幸村様に拭いてもらう訳にはいかない。
着物なんて脱いだら、一発で女だとばれてしまう。
「気遣いありがとうございます。その、自分で出来ますので…」
「何を言っている。背中などどう拭くのだ」
「だ、大丈夫です。何とか拭けますから…」
「遠慮するな。きちんと拭いた方がいいだろ?」
「いやでもその…こんな貧弱な体を、幸村様にお見せする訳には…」
「別にお前が貧弱であろうことは、見た目で分かる。今更気にするな」
ど、どうしよう。
何て言ったら納得してくれるのかな。
「と、とにかくその、は、恥ずかしいので…」
頭が回らないせいか、限りなく本音に近い言葉しか出てこない。
「俺は気にしないから大丈夫だ。そんなに遠慮をするな」
笑顔で幸村様は、掛け布に手を掛ける。
「ちょっ!?」
力で敵うはずもなく、あっさりと掛け布を剥がされる。
幸村様の手が、襟へと伸びてくる。
脱がされないように、着物を押さえるので精一杯になる。
ど、どうしよう。いや…!
思わずギュッと目を瞑る。