夢小説(短編)
□愛ある仕返し
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いつもいつも、と思う。
その意地悪な態度も、少しだけ分かりづらい優しさも。
何よりも、その愛情を。
私だけが受けている。
そんな気がしてしまう。
そしてきっと、私だけがドキドキして。
私だけが幸せなのだ。
それってちょっと不公平、だと思う。
「たまにはちゃんと、返さなくちゃ…」
手のひらに握ったそれに、ギュッと力を込める。
無理を言って、手に入れてもらった物だ。
きちんと有効に活用すべきだという気持ちも、決心を後押しをする。
次に、才蔵さんが帰って来たら……
心の中で、実行する決意を固める。
名付けるならばそれは、『愛ある仕返し』だ。
「才蔵さん、早く帰って来ないかな…」
月明かりが優しく照らす夜空に向かい、期待と不安を込めて、ぼんやりと呟いた。