夢小説(短編)

□愛ある仕返し
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再会は、思ったよりも早く訪れた。
次の日の早朝、才蔵さんが任務から帰ってきたのだ。

「おかえりなさい、才蔵さん…!」

嬉しさを込めて、心からの笑顔を送る。

「ただいま、小姫」

いつからだろう。
返ってくる才蔵さんの笑顔も、随分と優しいものとなった。

私を好いてくれているって、ちょっとはうぬぼれてもいいのかな…?
 
まだその優しさに慣れなくて、少しでも向けられる度に、自然と鼓動が高鳴ってしまう。

ああ、えーと、ど、どうしよう……。

昨夜、あんなにもやろうと、決意を固めたのに。
本人を目の前にすると、何故か言い出しづらくなってしまう。

「何?」

そんな私の気持ちを察してか、才蔵さんは優しく問いかけてくれる。

「何か言いたいこと、あるんでしょ?そわそわしてないで言えば?」

言い方はそっけないけれど、口調は随分と優しい。

任務で疲れているとは思うけれど、今が実行に移す絶好の機会という気もした。

「…あの、才蔵さん、今日はこの後、お時間ありますか…?」

「任務から帰って来たばかりだし、次の予定は無いから、これから休むだけだけど」

よし!

心の中で拳を握る。

「それではお休み前に、私のお部屋に来ていただけますか?」

「何それ。…誘ってるの?」

その顔が、少しだけ意地悪そうに笑う。

「も、もう!こんな朝早くから、そんな訳無いじゃないですかっ!」

多分冗談だろうということは分かっているけれど、ついつい顔が赤くなってしまう。

「はいはい。でも何。行けば何か、いいことでもある訳?」

「はい。…『良い事』、してあげますよ?」

「『良い事』…?」

少しだけ不思議そうな顔をした才蔵さんと共に、私の部屋へと足を進めた。
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