夢小説(短編)

□君と相合傘
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「……っ!!」

恥ずかしいやら、くやしいやら。

笑ったままの才蔵さんを、真っ赤な顔のままジトッと睨みつける。

ひとしきり笑い終えた後、才蔵さんはこちらに傘を傾けて微笑む。

「ほら、入れば?」

「…ありがとう、ございます…」

何となく、素直に入るのは癪に障ったけれど。
意地を張って濡れて帰るのも大人げない気がして、しぶしぶその傘に入る。


並んで歩いて気づく。
傘はやはり、二人で入るには小さいようで、互いの肩が雨で濡れている。

私はともかく、才蔵さんの肩が……

才蔵さんの着物の左肩部分が、雨に濡れてすっかり黒く染まっていて。
滴が少し付いた程度の、私の右肩と見比べる。

本当に才蔵さん、優しいんだから……。

私が雨に濡れないよう、ごく自然に気を遣ってくれているのがよく分かる。

こういうことされちゃうから、意地悪も許せちゃうんだよね…。

さっきまでもやもやしていた気持ちが、すっかりどこかに飛んで行ってしまった。

「才蔵さん、私、少し位濡れても平気ですので。もっとそちらに…」

申し訳なく思いながらそう言うと、才蔵さんはふっと笑う。

「ああ、この位は別に…」

言い掛けて、何故かそこで止まる。

「才蔵さん?」

不思議に思って見上げると、ニコリ笑顔を返される。

「そうだね。濡れたくないなら、もっとひっついて」

「!?」

そっと肩を抱き寄せられて、その密着具合に、思わず顔が赤くなってしまう。

た、確かに、これなら濡れないけれど。
でも、私の心臓が持たないかも…。

「…もしかして、照れてるの?」

すぐ傍で囁かれ、どきんと心臓が大きく跳ねる。

「て、照れていませんっ!!」

「じゃあ、何でそんなに真っ赤なの?」

くすくす笑うその声は、完全にからかい口調で。

「も、もう、私で遊ばないでください、才蔵さん……!」


おしまい


傘差し才蔵さんの台詞からの妄想夢。
この後帰ったら、実は才蔵さんは偶然会った訳ではなく、本当はヒロインをわざわざ迎えに行ったことを佐助辺りにばらされる感じでお願いしますw
「何だ、小姫。先生に無事会えたのか?」「え?」みたいにね^^
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