夢小説(短編)

□星に願いを
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「見つけられるかな…」

空を見上げ、一人呟く。

縁側に座って、どの位経ったのだろう。
一人で過ごす時間は、少しでもとても長く感じられた。

それでも、流れ星を見つけたくて。
願い事を言いたくて。

それだけで願いが叶うなんて、勿論思ってはいないけれど。
願わないよりは、願う方が実現する気がした。

本当は。
本当は才蔵さんと並んで、二人で流れ星を探せたら、どんなに良かっただろう。

それもある意味、叶わない願いなのかな。

そんなことを思いながら、小さく苦笑する。

「何一人で笑ってるの」

「!?」

その声に驚いて見上げると、すぐそこに才蔵さんが立っていた。

「さ、才蔵さん…」

「もしかして、流れ星探し?お前も好きだねえ」

「べ、別に、私の勝手じゃないですか!」

何となく呆れられたような気がして、ムッとしながらそう言い返す。

「そんなに探したいのならさ…」

才蔵さんが私の目の前で屈み、まっすぐこちらを見て笑う。

「行く?屋根の上」

付き合ってくれるってことですか?

その言葉を口にする暇も無く。

「!?」

横抱きにされた私は、いつの間にか屋根の上にいた。

「さ、才蔵さんっ!!」

「何?」

「私、行くって返事、してませんっ!」

急に連れてこられた腹いせにそう言うと、才蔵さんはニコリを笑う。

「行くって言ったでしょ」

「え?」

「あんなに嬉しそうに笑うし、どう見ても顔に大きく、『行きたい』って書いてあったけど?」

「!?」

心を見透かされたようで、思わず恥ずかしくなる。

そんなに嬉しそうな顔したかな、私。
それは確かに、嬉しかったけど…。

「それとも、降りたいの?それなら…」

「い、いいです!降りませんっ!」

慌ててそう言うと、楽しそうにくすくす笑われる。

「じゃ、来たかったってことでいいでしょ?」

「…いいです。ありがとうございます…」

渋々認めて、屋根の上に腰を下ろす。

空に少し近づいた分だけ、星がきれいに見える気がした。

「どれだけ頑張る気か知らないけど。風邪、ひかない程度にね」

そう言って、才蔵さんはすぐ隣に腰を下ろす。

…何だかんだと、付き合ってくれるんだ、流れ星探し。

そう思うと嬉しくて、思わず顔がほころんでしまう。

さっきまで一人で寂しくて、流れ星が見つからないことが、ただ不安だったけれど。

今は才蔵さんが隣にいてくれるから。
ただそれだけで、流れ星なんか見つからなくてもいいとさえ思ってしまう。

やだな、私。

照れ隠しに、ただ真っ直ぐ空を見つめる。

私、本当に才蔵さんが大好きなんだ。
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