夢小説(短編)

□告白の行方
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あれ……?

自分が今、どうしてここにいるのか分からなかった。

いつの間に私、眠ったんだっけ…?

ぼんやりとした頭でも、良く見慣れた周りの光景に、自室で褥に横たわっているということが分かる。

起き上がろうとして、あまりの気持ち悪さにまた褥へと倒れる。

「私…」

呟いて、自身の息の熱さに驚く。

相当熱が高いようだ。

この頭の痛さも気持ちの悪さも、高熱のせい…?

ガンガンと頭が痛くて、とにかくだるくて気持ちが悪い。

具合が悪くて寝ているということは把握したけれど、いつから寝ているのかさっぱり思い出せない。

今日の朝は、普通に起きて…。
少しだるさを感じたけれど、いつも通りに起きたはずだ。

朝げも作って、少しだけれど食べた記憶がある。
その後、お団子を……。

作り始めた記憶はあるのに、作り終えた記憶が無い。

もしかして私、お団子を作っている最中に、倒れてしまったのだろうか。

そうすると、倒れているのを見つけた誰かが、部屋まで運んでくれたことになる。

台所もそのままなら、片付けに行かなきゃ。
片付けに…。

そう思いながらもあまりの具合の悪さに、そのまま意識を手放してしまった。


ひやり。

額に何かが触れる。

…冷たくて、気持ちいい……。

そう思っていると、その感触が離れ。
代わりにまた、冷たい何かが触れる。


「あ、起こした?」


ゆっくりと目を開けるとすぐそこに、才蔵さんの姿が見える。

額に感じるひんやりとした布の感触から、今その布を乗せてくれたであろうことが分かる。

いつの間にか、私、眠っていた…?

先程起きたときより、意識が朦朧としている。
更に熱が上がってしまったのかもしれない。

私、今目が覚めたのかな?
それとも、まだ夢を見ている……?

夢と現実の区別もつかないまま、目の前の才蔵さんを見つめると、その顔が優しく微笑む。

「寝てな」

その囁きと共に、そっと優しく髪を撫でられる。

「………」

ああ、これは……夢なんだ。
そう確信した。

だって現実の才蔵さんが、こんなに優しい訳が無い。
そんな自分の現状が、悲しくはあるけれど。

夢だと納得したら、思わず苦笑してしまう。

こんな優しい、才蔵さんの夢を見るなんて。
ああ、私。
夢でもいいから、才蔵さんに優しくしてもらいたいんだな…。

「才蔵さん…」

「何?」

笑顔で答えてくれる才蔵さんに、出来る限りの笑みを返す。

この才蔵さんなら。
これが私の夢なのなら。

欲しい答えが、もらえるのかな…?

ドキドキと、胸が高鳴る。

どうせ夢なのなら……言ってもいいよね?

「才蔵さん、私……」

うつろな視界のまま、真っ直ぐにその顔を見つめる。

「才蔵さんのことが、好きです……」

頬の熱さに羞恥の熱が加わり、これ以上無いほど熱く感じる。

少しぼやけて映る才蔵さんが、目を見開くのが分かる。

「だから…私のこと、好きになって、もらえませんか…?」

夢なら。
夢なんだから。

ただ優しく、「いいよ」って言って。
その一言だけでいいから。

目の前の才蔵さんの表情が、不意に無表情になる。

ああ、まずい。
これは……。


「無理」


無情なその一言に、心が折れる。

夢なら何も、そこだけ現実的じゃなくていいのに。

「才蔵さんの、意地悪……」

その一言を呟いた後、そのまま意識を失った。
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