短編小説
□ドッペルゲンガー
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今日も一人この家の中を歩く。
この家には私以外はいない。
いないのに、
ぺたり、ぺたり
足音が聞こえる。
今日もきずかぬふりをする。
ふと、足音が大きくなっていることにきずく。近ずいて来ている。
可笑しい。いつもなら何処かへ行ってしまうのに。
怖い。恐い。コワイ、怖い、コワイ、恐い。
「誰かいるの?」
声をかけると足音が止まった。
しかし、またすぐに足音が近づいてくる。
ぺたり、ぺたり
ガタガタと震える身体を抱きしめてもう一度声を出す。
「来ないで!!」
そう声を出したはずだったが、恐怖で声がでず、空気だけが喉からでた。
「…….ヒュー……ヒュー」
怖い。上手く息が出来ない。苦しくなってきた。
ピタリ。私のいる部屋の前で足音が止まった。
ギィ……そんな音がしてドアが開かれる。
足元に落としていた視線を上げる。
ゆっくり、ゆっくりと
汚れた足が見えた。
怖い。でも、何故か見たことがある気がした。
そして、勇気を出して勢いよく顔を上げた。
そこに居たのは
(私であり、私でないナニカ)
(それは、私を見てニヤリと笑った。)