短編小説

□差
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私とあなたは
何をするにも一緒くらいだった。

勉強をするのも。運動をするのも。

でも、今は違う。
圧倒的にあなたの方が上なのだ。

勉強も、運動も、
いつの間にか差をつけられていた。

昔は、私の方が少しだけ上だった。
それが嬉しかった。
いつも私と同じくらいだった君に勝てていたから。

気付いた時には遅かった。
もう、追い付くことの出来ないくらい差が開いていた。

あなたはきっと私が知らないところで努力をしていたのでしょう。

でも、あの頃の幼稚な私はそれが気に入らなかった。
腹が立った。

だから私はあなたに酷いことを言った。
だけど、あなたは私を優しく受け止めてくれた。

私は気付いた。
嗚呼、君はこんなにも成長していた。
身も、心も全て。

それでも私は、成長できないでいた。

あなたへの「嫉妬」
自分への「嫌悪」
いろんな感情が入り混じって気持ちが悪い。
それは今でも同じ。

どんどんと離れていく私とあなたとの
距離。
もう二度と追い付くことの出来ない
距離。

それでも、それでもあなたは
私がまた追い付くことを待っている。

そんなこと一生あるわけないのに。

嗚呼、どうしてあなたこんなにも純粋なのだろう!
真っ黒に染まった私と違って!
嗚呼っ!鬱陶しい。
早く私なんか放って行けばいい。
私を置いて消えてしまえばいい。

どうせ私は「オニモツ」なのだから!


……


きっとこれは言い訳。
あなたに負けたことを認めたくないだけだ。

私は疲れた。
あなたと一緒にいることが。
私は疲れた。
あなたとの差を埋めることが。
私は疲れた。
あなたのその純粋な気持ちが。

私は疲れた。
私は疲れたのだ。

私には、もうあなたに追い付く足が無いのだ。

あなたの涙を拭う手も、
あなたの声を聞く耳も、
あなたに語りかける口も、
あなたを映す瞳も、
あなたの名前を呼ぶ声も、

全て、失くしてしまったのだ。

だから、だから私を、

どうか、どうか…

「置いていってはくれないだろうか?」

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