DREAM

□鬼火一族。
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お互いの思いが通じて、同じベッドで朝を迎えられた。
これまで感じたことのない幸福感に、俺は浮かれてしまっていた。
感覚を研ぎ澄ませば感じ取れたかもしれない男の存在に、気付けなかった。
相手が気配を押し殺し、感知も不可能だったのかもしれないのだが・・。
いや、これ以上は言い訳になってしまう・・。



そうだ。
こうなってしまったのは・・俺のせいだ・・。

動揺と後悔が自分の心を支配しようとしていたが、全てを押し殺した。


何者かにゆながさらわれた。
部屋に上がると血が床に落ちていた。それと術の痕跡。

『口寄せの術・・!!』

その場で忍犬のパックンを召喚し、ゆなに持たせたあの紙の匂いを追わせた。
里の正門の前にはシカマル、ネジとサクラが既に待機していて、
匂いをたどるパックンを先頭に、
ネジに周囲の警戒もさせながらゆなの後を追った。


パックンが先頭を行く。

『あっちだ!・・近いぞ!!』
『いました・・!2時の方向、一人はゆなさんです!!』

無事か?

一番聞きたいことだが、今はそんなことを聞いているヒマはない。
ゆなに危険が迫っている。

『・・っ!!』

『なんだ今のチャクラは・・・!』


ゆなへと向かう方向から突然発せられた、全員が確かに感じた威圧感のある強いチャクラだったが、それは一瞬で消えてしまった。

(まさか・・・!!)

焦りの色が濃くなっていった。押し殺したはずの感情が爆発するようにあふれ出てくる。

(ゆな・・・・!!)

視界に仰向けに倒れる男が飛び込む。少し離れたところにゆながいた・・。
だが・・・・・。

肩とわき腹にクナイが刺さり、血がたくさん流れてしまっていた。
膝立ちのまま、吐血した口をわずかに上げて微笑んだまま、
今にも倒れようとしている意識のないゆなの体を、
倒れる前に素早く駆け寄り抱きとめた。

「ゆなっ・・・!!!」

忍者でもないゆなをいたぶったようなクナイの刺さり方を見て、
カカシは爆発しそうな怒りを必死にこらえた。
それは、自分の不甲斐なさが生んでしまったことへの、
自分への怒りでもあった。

(くそっ・・・!!どうして・・・・)


サクラの止血が済む頃、里から数人の暗部が追いついた。
そのうちの一人が静かにゆなを抱き上げ、
パックンが先導してサクラとシカマルと共に急いで里へ向かった。
その背中を見送ったあと、仰向けで倒れている男を見つめるカカシの拳がギリギリと震えていた。




男を尋問班に引き渡すと、急いで病院へ向かった。

ゆなの手術に綱手様があたってくれていた。

7時間後・・・・。
手術室のドアが開いた。

『五代目・・・・』

気配を察していたカカシは落ち着いた様子を取り繕って、出てきた綱手に聞く。

『私を誰だと思ってる?・・大丈夫だ、心配いらない。傷はどれも深かったが、初めの処置が良かったから、命に別条はない。だが、問題もある。クナイに塗られていた毒は解毒できたんだが、神経系の毒の影響でしばらく副作用が出る。それ以外は問題ないから安心しろ。』

『そうですか・・・よかった・・。・・本当に・・』

『今回の件、あまり思い詰めるな・・。敵の存在に気付けなかったのはお前のせいではない。・・ゆなとの関係も少しは分かっているつもりだ。こんなこと私から言うものではないかもしれんが、あの子の傍で守って支えてやれるのは今はお前しかいない。知らない土地に来て、さらわれて殺されかけて。この先も変わらず暮らせるかどうか、それはゆなの強さ次第だが、一人で乗り越えられるようなことではないだろうからな。


『五代目・・・』
『否定しないってことは、そうなんだろうな。まぁ、仕事のことは気にするな。ゆなが回復するまでは長期の任務は入れないようにしておく。』

『あの子のそばにいてやれ』

去り際にそっと、念を押すように言われたが、小さく『はい』としか返せなかった。
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