DREAM

□消えない想いの行き先。
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先回りして声をかけようと思ったが・・・なぜか泣いていた・・。


なぜ泣いている・・?
なにがあった??





これまで一人で生きてきて、

この世界にも一人でやってきて、

そして、またこの里でも一人で強く生きていこうとする。


病院でゆなの孤独と寂しさを知った。

全てをその小さな体で背負おうとするゆなをどうしても放っておけない俺は、


少しでも関わりたくて、頼ってほしくて。

いつの間にか惹かれていた。

背負ったものの大きさを諸共しない優しい嘘のない笑顔に。

その笑顔を守りたいと思ったんだ・・。


けど、きっとゆなは自分の世界へ帰ってしまうだろう・・。


別れが辛くなるなら、

この気持ちはこのまま伝えずにいたほうがいいのかもしれないが・・。



「まいったね、どーも・・。」


一足先にゆなのアパートの玄関ドアの前に降り立ち、天を仰いだ。



程なくして階段を駆け上る足音が聞こえた。


「やぁ・・。」


「っ・・!!カカシさんっ!なんで・・・」


驚いたその目はもう濡れてはいなかったが、僅かに赤く腫れていた。


「聞き込みの途中で見かけてね。急いで帰ろうとしてたから、

 部屋の前で待った方がいいかなーって。

 なにか急ぎの用?」


「いや・・、でも・・聞き込み・・?」

「ま、人探しで、ちょっとね。」

(そっか・・そうだよね・・・。私の勘違いだったんだよね・・)


「そ・・そうだったんだ・・。別に急いでたわけじゃないんだけど・・。・・上がってく?」


「や、いいよ。きっつい香水付けられちゃってねぇ・・。着替えてまた聞き込みに行かなきゃなんないのよ。」

「そっか・・・。」



一瞬ゆなが悲しそうな顔をしたのは気のせいか?



「ま、元気な顔が見られて良かったよ。俺でよければ何でも聞くから。あんま無理しないよーに。」


「ありがとう。カカシさん、もね。」


カカシはニッと笑って片手を上げると、シュッと消えた。



ゆなも誤解が解けてほっと胸を撫で下ろしながら部屋に入った。


「・・・カカシさん・・・」



どうやら私はもう引き返せないところまで来てしまっているみたいだ。

抑えても抑えても溢れる感情に、ただ振り回されてばかり・・。

きっと、自分の気持ちさえ伝えられればそれで吹っ切れる。

そうだ・・!あたって砕けてしまおう・・!


お互い住む世界が違いすぎるし・・。
片思いで終わらせよう・・。


カカシには私よりもっといい人がきっといる。







3日後。

アカデミーでの仕事が始まった。


そこは本当に男ばかり・・。

いや、忍者ばかり・・・。



自分が女ということもあって、かなり浮いている気がしていたが、

周囲の目など元々気にしない性格のせいか、すぐに馴染み、

仕事も書類整理や掃除などの雑務はなんでもこなせるようになっていった。



「ゆなさんが来てくれて本当に助かってるんです。俺たちでは気づかないことも指摘してくれるし、アカデミーの雰囲気もとても良くなりましたから。」




アカデミーで働き始めて2カ月ほど過ぎたころ、

昼食をとる為屋上の円形の椅子に座り、

手作りの弁当を食べているとイルカがやってきて、

ふとそんな話をしてくれた。



「そんな・・、私、大したことしてないですよ。

けど、子供たちが元気に毎日来てくれると、私も元気をもらえるからもっと頑張っちゃうんですけど・・。」


「はは、そうかもしれませんね。でもあまり無理しないでくださいね。」



昼食を食べながら談笑するゆなとイルカ。





それを遠くの電信柱から気配を消してじっと見つめる一人の男がいた。


「なーにあれ。まるで恋人同士じゃないの・・・。」


「珍しいですね・・。妬いてるんですか?カカシさん?」


「・・・・・・。」



背後からやってきた猿の面をつけた暗部の一人が、

タイミングよくカカシの独り言を聞いてしまったため、

カカシは無言の圧力をかける。



「・・す・・すみません・・。」

(こ・・怖ええ・・・)


「・・招集か?」

「ええ。五代目様がお呼びです。」

「分かった。・・・・・すぐ行く。」
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