DREAM
□生と死の間で。
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「ゆなちゃん」
「わ、私・・か・・帰るね。」
「待って」
ベッドから降りようとするゆなの右腕をカカシの手が捕まえた。
「ちゃんと聞かせて?昨日言ってたことが本当なのか・・・」
「え・・?・・覚えてなくて・・」
「覚えてなくても気持ちに嘘はつけないでしょ?」
「私・・・何を言った・・の?」
鼓動が早まる。期待と不安の入り混じった緊張感でカカシのほうに振り向けない・・。
「・・俺のこと・・好きだ、って。・・・本当?」
「・・っ!!・・・」
(・・わー!!・・言ってるー!!言っちゃってるよっ!私のバカーっ!!!)
「・・・ほ・・、本当・・です。」
耳まで顔を赤くして、俯くゆなは小刻みに震えていた。
「そうか・・・」
そういうとカカシは掴んでいた手を離した。離された手を胸の前でぎゅっと握り、床に脱ぎ捨てられた服を拾いながら袖を通した。
「帰るの?」
「は・・・はい。別に返事とかいらないんで・・・」
「本当に俺の返事は聞かなくていーわけ?」
「え・・・」
自分の気持ちさえ伝えられればそれでいいと思っていたゆなは驚いた。
成就してはいけない。結ばれてはいけない。片思いで終わるつもりだった。お互い住んでいた世界が違うし、向こうへ帰るべきだと言われていたこともあったからだ。
それでも今にも暴走してしまいそうなこの気持ちを止めるには、当たって砕けて切り捨てるしかないと思った。自己中心的な考え方だろうが、カカシはきっと自分の気持ちを受け取ったりはしないだろう。そうすれば諦めもつくし、私の気持ちの暴走も止まるだろう、と。
そんな矢先コテツに飲みに誘われた。飲まないつもりだった。
でも、急に過去の嫌な記憶を思い出し、せっかく誘ってくれたコテツに酒の相手もできないのは申し訳なくて、少しだけなら・・と過去の事など忘れるつもりで飲んだのだ。しかし普段飲まないゆなの体に酒は早く回り、やがて記憶も途絶えた。
「わ、私は・・、カカシさんに気持ちを伝えたかっただけで・・返事なんて・・」
「聞くつもり、なかったんでしょ?」
「・・!」
「ゆなちゃん、覚えてないだろうけど、俺のこと好きだって言ってくれたあと、返事はいらないって言ったんだよ・・・。どうしてって聞いたら『カカシは私のことなんて好きじゃないでしょ』って。
・・ゆなちゃんは酔うとほんと素直に本音を言っちゃうみたいね。
だからいろいろ聞いちゃった。」
ズボンのベルトを締め終えたまま止まっていた手をベルトから離し、後ろのベッドでニヤニヤしながら話すカカシに向き合った。カカシもベッドの近くの床に落ちている口布付きのノースリーブのアンダーを拾って袖を通すと、ベッドに腰掛けて、見上げるようにしてゆなをまっすぐ見つめた。
「だから、俺も本音を言うよ。」
「・・カカシさん・・・」
立ち上がって目の前まで来ると、今度は見下ろすように見つめてきた。
ふっとカカシの優しい香りが鼻をかすめた。
「俺も・・・好きだ。」
「・・っ!!・・」
「俺だって言うつもりなかったさ。理由は君と同じ。・・気持ちが通じても会えなくなるのかと思うとこのまま伝える必要ないと思ってね。でも、君の気持ちを知ったら、抑えが効かなくて・・・、謝るのは俺のほうだよ。」