DREAM

□鬼火一族。
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ゆなが寝ている病室へ行く。
まだ麻酔が効いていていつ目覚めるかわからないそうだ。

あとにやってきたサクラに説明を聞いた。

『解毒処置と解毒剤で体の毒は全て中和できていますが、一部麻痺・・というか、感覚が鈍ったまま回復に時間のかかる後遺症が残っているんです。今は・・ゆなさんの意識が戻ってから診察するそうです。』

『そうか・・。ありがとう、サクラ。』


病室のドアを開ける。
だだっ広い個室の部屋に、ゆなはいた。
真っ青だった血の気の失せた顔からは幾分か良くはなっているが、まだ健康的な肌色とはいえない顔色をしていた。ベッドのそばにある椅子に腰かける。
真っ白なシーツの布団を腹までかけられている。
両腕には天井から吊るされている2つの点滴がつながっていた。
入院着の上からでもわかる、肩や胸、手首の包帯。
ゆなの包帯を巻いていない方の手をそっと下から掬うように持ち上げた。
武器を持ちなれた骨ばった自分の手とはまるで違う。

やわらかく滑らかで、女性らしい優しい手・・・。

自分たちのように任務や戦いや、かつて暗部に身を置き、暗殺などに手を染めた時代もあった。
そんな手とは全く異なる、清らかな手。そんなゆなが里を抜けた重罪人に急襲され殺されかけて、敵に立ち向かえるかどうか・・・ゆなの肌や体を見れば一目瞭然だ。

綱手から言われたことが心に突き刺さる。

(・・・お前のせいではない・・・)

けれども俺は・・・―――




「・・シ・・・」
「ゆな・・?」
「・・・カカ・・シ・・・・」

ゆながうわごとのように何か言っている。それは自分の名だった。

「・・・カカシ・・・そばに・・・・・いて・・・」
「ゆな・・?気がついたか・・・?」
「・・カカシ・・さん・・」

両手でゆなの手のひらを包んだ。

「・・・すまない・・。俺がちゃんと敵に気付けていれば、お前をこんなふうには・・・!」

「あ・・カカシさん?・・それは・・・カカシさんのせいじゃないよ。」
「・・ゆな・・気がついたか・・」
「油断してたのは私のほうだよ・・。あのあと、部屋に残ってれば良かったし・・・うちに上がってもらえば良かった。・・私・・、恥ずかしくて・・・こんなに好きなのに、気持ちがつながっても・・・どう接していけばいいか・・わからなくて・・・。逃げるように部屋を出ちゃったから・・・。さらわれて、傷だらけになって・・・たくさん心配かけて・・・ごめんなさい・・!」

ゆなのうっすら開いた目から涙がこぼれた。

「ゆな・・もういい、しゃべるな。」

「気がついたみたいですね。」

カカシは気づいていた。
ゆなの意識が戻る直前に自分がゆなに話しかけたのを、
病室の前を通りかかったサクラが聞いて、
静かに入ってきていたのを。
そして聞かれてしまった・・・。

「・・カカシ先生、・・・・・不潔です!」
「えっ!いや・・それはその・・・はは、参ったなぁ・・」

「・・その声は・・サクラちゃん・・・?」

うっすら開いていたゆなの目が少しだけ見開かれたが、視線はさきほどからずっと天井を見詰めたままだった。

(もしかして・・目が・・・)

「ゆなさん、気分はどうですか・・?」
「あんまり、良くない・・かな。頭がくらくらするし・・、傷も痛いし・・あと目も・・・。」
「・・・わかりました。いま、綱手様をよんできますね。」

サクラが病室から出て行ってからほどなくして綱手がやってきた。
術後間もないからか、簡単な診察を済ませた。

「麻酔がきれて間もないから、神経が鈍っているということもあるが、おそらく毒の後遺症で視神経をやられているようだ。回復には少々時間がかかるかもな。輸血もしたんだが、やはり貧血の症状が出ている。傷を癒し、それから普段の生活に慣れるまで最低でも1ヵ月の入院だな。あとは視力の戻りかた次第だ。今は光さえ感知できていないからな。」




「・・・ゆっくり休め」

あとはサクラ達に任せる、
と言い残して綱手は部屋を出て行った。
サクラは痛みが強くなってきているゆなの様子を見て、
痛み止めを点滴に混ぜて出て行った。


「・・少し、眠ったらいい。」

「・・うん・・。カカシさん、私ね・・・、気を失う前に、クナイを・・あの男にクナイを投げたの。なんにも反撃できない自分が悔しくて・・。そしたらね・・・それが青く光って・・・届いたんだ・・・。私・・・チャクラなんて・・・扱えない・・はず・・なのに・・・・」

「そうだったのか・・・。・・ゆな?」
「・・・・・」
「・・・眠ったか・・。」

麻酔が完全に切れていないのと、
サクラが打った痛み止めが効いているのだろう。
ゆっくりと吸い込まれるようにゆなは眠りについた。
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