捧げもの

□それでも私は
1ページ/1ページ



とても重要なこと…
赤ちゃんができたっ!!
なんてこと言えるはずもない
だって私の旦那さんは遠い場所にいるから
夢を叶えて宇宙飛行士になって…そして、今は宇宙にいる。連絡しようとも出来ない
いや、出来ないこともないかもしれないが、知らせなくても梓ならきっと許してくれるはず


そんな私は今、重い荷物を持っての帰宅途中




ガチャッ、




『!?』




ビックリした
梓の靴がおいてある
ということはっ!!




『梓っ!!』

「あ、お帰り名無しさん」

『た、ただいま。今日、帰りだっけ…?』

「うん、名無しさんを驚かせようと思って黙ってたんだけど、まさか家にいないとは思わなかったな」

『でも、ビックリしたよ』




あぁ、なんて暖かいんだろう
梓がいるだけでこんなにも心が満たされる




「重そうだね、名無しさん。僕が持つから、どこに持っていけば良い?」

『ありがとう』



そういえば…
ちゃんと、言った方が良いのかな?やっぱり
どんな反応するかな?


驚く?


喜んでくれる?
ちょっと反応が楽しみかも




『あ、あのねっ、梓。聞いてくれる?』

「うん?」

『あのね、私…赤ちゃんが出来たみたいなの』

「…」




言った!!
梓、どう思っているのかな…?




「それ、本当に僕の子?」




え?
今、なんて…言った?
私が他の誰かとしたとか思ってるの?
そりゃあ、梓と会える時間は少ないけど…こんなことって…




『ひどい』

「ぁ…」

『ひどい…酷いよっ!!私のこと疑ってるの!?梓なら、梓なら喜んでくれると思っていたのにっ!!私はこんなこと言われるために話したんじゃないっ!!』




私は家をあとにした
走って走って走った
そして近くの公園まで来ていた。



『ふぅ、』




ブランコに腰掛け落ち着く
目頭に涙がたまるのがわかった。

酷い
あまりにも酷すぎる
梓、喜んでくれると思っていたのに、何であんな…




「見つけたっ」

『!?』




目の前には梓がいた
全力疾走したのに、すぐ追い付かれてしまう。
私はこんな顔見られたくないのと、気が動転していたのとでその場から逃げだそうとした。




「バカッ!!赤ちゃんがいるなら走っちゃダメだろ」

『…』




あまりの驚きに足が止まる




『ぇ、梓は、信じてないんでしょう?』

「信じてるよ。さっきはごめん、あんな言い方して…」

『本当だよ!なんであんなっ、』

「気が動転したんだ」

『…』

「本当は嬉しかった。名無しさんとの愛の結晶だからね。どうしてあんな言い方したのか、自分でも分からない。でも、名無しさんの言ったことが本当だってことはわかるよ」

『じゃあ、産むからね。産んで良いんだよね?梓がなんて言おうと産むからね』

「うん、僕のためにも産んで下さい」

『…はい』

『ねぇ梓、名前どうしようか?』

「名無しさんはどうしたい?」

『質問を質問で返さないでよ』

「あはは、ごめん。
でもそうだなぁ…名無しさんの名前に因んだ名前にしたいな」

『え!?で、でもっ』

「名無しさんが決めて良いよ。実はまた近くに仕事の方で帰ってこれないんだ」

『そっ!そんなぁ』

「産まれるころには戻って来れるようにするから、さ」

『うん…待ってるからね』




そして私達はキスをした
約束ごとをつくるかのように…






END

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ