捧げもの

□恋人
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『宮地くーん
そろそろ私泣いちゃうよ?』

「な、泣くほどのことでもないだろう」

『いやいや、泣くほどだって。だっておかしいでしょ?』




付き合って1ヶ月経つのに手をつなぐことさえないって…
あれか?あれなのか?女としての魅力がないってか?悪かったな!




「例え周りがそうであろうと、俺たちは俺たちのやり方があるだろ」

『じゃあ、今日から手をつないで帰ろうね(o^─^o)ニコッ』

「なっ!そ、それは…」

『はっきりしない人は嫌いです』

「!?」




そんなに悩むことなのだろうか?
これじゃあ私のこと嫌ってるみたい…ま、そんなことあるわけないけどね




『みーやーじーくーん。あっそびましょ♪』

「…」

『あれ?どうしたの』

「迎えに来たって言えばいいだろ」




迎えに来て嬉しいのか
あんなこと言われて恥ずかしいのか、複雑そうな顔たまりませんなぁ




『いやぁ、楽しみだからさ。ホラ、早く帰ろう?』




部活の片付けを終わらせてなかった宮地くんを急かす
うるさいと叱咤しながらも、微笑んでいるのを見て私も頬が緩む
つまるところ、例え手をつなぐなんて初歩的なことが出来なくても、こんな一時があれば私はそれで満足なんだよね
出来ることに越したことはないけど




「何ボーッとしているんだ?帰るぞ」

『あ、もう!片付け遅いのが悪いんだよぉー』




なんて、憎まれ口たたくのも幸せだったりする。




「…」

『…』

「手、繋がないのか?」

『つなぐ!つなぐよ!?ただ…』

「?」

『何気に緊張するなぁと思って』

「名無しさん…」

『あ、照れた』




赤く染まった顔を隠すようにそっぽ向く宮地くん
耳まで真っ赤だから隠せてないけどね




『ねぇ宮地くん、こういう事は男から手を繋ぎにくるんじゃないかなぁ?』

「なっ…」

『ね?』

「分かった。つ、つなぐぞ…いいな?」

『は、はい』




改めて言われて思わず敬語に。




『…』

「ふ、どうした。今度は名無しさんが照れているのか?」

『嬉しいんだもん!仕方ないでしょ!?』




手を繋ぐ...
たったこれだけの行為を幸せと感じれるのは、きっと宮地くんだけなんだろうな


「名無しさん」

『なに?』




いきなり立ち止まったかと思うと、宮地くんは爆弾発言をした




「名無しさん、俺のことは名前で呼んでくれないか?」

『…』




聞き間違いでありますように…




「こ、恋人は名前で呼び合うものだろう?俺は名無しさんと、名前で呼んでいる。だから…」




微かに頬を染めながら言われたら…断れる訳ないじゃん




『…』




でも照れる訳で…




「すまない」

『へ?』

「いきなり過ぎた
と言うか、俺はどうにかしていたんだ。こんなことを頼むなんて」




こ、これは…言わないと宮地くんがショボーンって、ショボーンってなっちゃう!




『龍之介…くん』

「…」

『龍之介くん』

「名無しさん」

『恥ずかしいよ』

「俺もだ」




あぁ、でもこれで恋人として一歩前進…かな?


恋人の行為とは
手を繋ぐ
名前で呼び合う






END

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