捧げもの

□王子様
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『よっしゃー!今日も張り切って部活動ぉー!!』

月子「ふふっ、はしゃぎすぎて転ばないようにね」

『月子に言われたくないやーい』

梓「でも、夜久先輩の言う通りです。名無しさん先輩はどこか抜けているから、危なっかしいんですよ」

『木ノ瀬くんまで…』

梓「まぁ、張り切る気持ちは大事だとは思いますが」

『よっしゃ、行くぞー!!』




と、意気込んだ瞬間




『あっ…』




何もないところで躓いた




木ノ瀬「危ない!」




抱き締めるように支えて助けてくれた木ノ瀬くん






──…






『ということがありまして、いやぁーあの時は本当の王子さまの如く。カッコ良かったんですよ。
琥太郎先生も一度そういう経験したらどうですか?きっと惚れちゃいますよ?』

「男に惚れてもな…というより、今の話しを聞いている限り、何で怪我をしたのかが分からないんだが」

『あ、その後また何もないところで躓いてこけました』

「木ノ瀬は助けなかったのか?」

『そんな、ずっと一緒にいるわけではないんですから』

「そうか…」

『それにしても近かったなぁ』




手で、このくらい近かったんですよと伝えれば眉間に皺が増えた
あからさまに不機嫌であることが分かる




『私、気に障るようなこと言いましたか?』

「…いや」




妙な間が気になるのですが…
気にしたら負けですか?
すると、扉の開く音が後ろから聞こえた




梓「名無しさん先輩、迎えに来たんですけど出れそうですか?」

『あぁ、もうバッチr』




うん。
迎えに来てくれた木ノ瀬くんに元気よーく返事をさ、
バッチリ!って言おうとしたのにさ、琥太郎先生に口を塞がれた


なんで…?




「悪いな木ノ瀬。コイツ、見た目より酷いから今日の部活は行けないと言っておいてくれ」

梓「はぁ…、分かりました」




うん。
フツーに去って行く木ノ瀬くん
どう考えてもおかしいでしょ




『なんで嘘なんか吐いたんですか?私、部活に出れないほど酷くないですよ』

「言わないと分からないか…?」




それは、言われなくても分かるってことだろうか?
しばらく考えてみたけど、やっぱり分からなくて




『わかりません』

「…」

『先生?』

「大人気ないのは分かってる」

『はい?』

「…」

『(無言!?)』




何分くらいたっただろうか。いや、実際には何分ともなかったかもしれない
ただ、その重い空気を打ち破るかのように、琥太郎先生は不意に声を発した




「名無しさん」

『は、はいっ!!』




いきなり名前で呼ばれたため、必要以上に大きい声を出してしまった。




「これから言うことは独り言なので聞き流して構わない」

『?』

「嫉妬したんだ。名無しさんが木ノ瀬のことばかり話すから…」

『!?』

「まだ単純に、木ノ瀬の話しをしているだけなら良かったものの、王子さまだの惚れるだの言われたら俺の立場はどうなるんだ。
これでもお前の彼氏だ。嫉妬しない訳がないだろう」

『琥太郎、先生』

「悪かったな名無しさん。本当は部活に行きたかったのにな…
木ノ瀬が迎えに来たんだと分かったら、誰にも渡したくないと思ってしまったんだ」




まだ何かを言っている琥太郎先生
でも、私の頭にはもう何も入ってこなくて…




『(どうしよう…嬉し過ぎる)』




ちょっとしたことで嫉妬してしまう彼がすごく愛しい
先生…今、あなたに触れてもいいのでしょうか?




『琥太郎さん』

「なんだ?」

『ごめんなさい。私の王子さまは琥太郎さんだけです』




言いながら、少しでも多く気持ちが伝わるようにと抱きつく




「名無しさん」




そっと、私の頬に琥太郎さんの手がそえられ顔が近づく
それはもう一歩動けばキスできるほど近く…




「もう二度と俺以外の男の話をしないこと。約束できるならご褒美としてキスをしてやるが…」

『なっ!なんですか、それ…』

「約束、出来ないのか?」

『〜〜〜っ、自信はないけど、琥太郎さんが嫌がるなら話さない』




そして軽く触れるだけのキス
やっぱり、私の王子さまは琥太郎さんだけです






END

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