捧げもの
□元気の源
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最近、翼が構ってくれません。
私は我慢できるほど大人ではない…だから…
『たのもー!!』
「ぬわっ!?」
扉を壊す勢いで開ける
そのまま翼の方向へまっすぐ進む
突然の訪問者に驚き声を上げる翼に可愛いなぁと一瞬にして癒される
翼はというと、胡座をして次の発明らしきものをいじっていた
今は私の登場により手が止まっているが
『どうして』
「ぬ?」
『どうして最近構ってくれないのぉ!!寂しくて死んじゃうよぉ』
「ぬわわっ、名無しさん死んじゃうのか!?」
『バカッ、モノの例えだよ!』
死ぬという単語にバカみたいに心配してくれるところから私のことが嫌いになったとかではなさそうでひとまず安心してしまう
ただ、だとすると何故翼は私に構ってくれないのか…飽きてしまったとか言われたら立ち直れる気がしない
翼と向き合うように座り落ち着く
私からただならぬ空気を感じたのかお互いに正座をして目を見つめ合う
そして手を握り問いかける
『翼、さっきも言ったけど何で最近構ってくれないの?』
「ぬ?」
『え?』
間抜けな声を出す翼につられて私も間抜けな声が出た
まさかとは思うが、翼にとっては構う構わないとかの意識はなかったのではないだろうか?
だとすれば私は一人でもやもやと悩んでいたのではないか
ガックリと肩を落とすと翼はまたバカみたいに心配してくれる
「名無しさん、何だかよく分からないけど元気を出すのだ!」
『う、うん』
「名無しさんが元気じゃないと俺も辛い」
握っていた手をキュッと握り返されて、本当に辛そうな顔をしていることから愛されて居るんだな実感する
その温かさに触れ、フッと笑みがこぼれる
『翼って…』
「ぬ?」
『本当にバカ』
「うぬぬ、名無しさんに言われたくないのだ」
『でも、そう言うところが好き』
「ぬわわっ!」
甘えるように抱きつく
翼は驚いたものの、ちゃんと受け止めて抱き締め返してくれた
だが、抱きつく勢いがありすぎたのか、側に置いてあった翼の発明品(仮)が腕に当たってしまいガシャンと音を出した
それに気付いた翼は抱き締めてくれていた腕を緩め泣きそうな顔をしていた
『つ、つばさ…えっと』
「…」
『ご、ごめん』
申し訳ない気持ちで一杯になり、俯く
暫くするとぬははといつもの翼の笑い声が聞こえたかと思うと頭を撫でられた
顔を上げると本当に何でもなかったかのように笑う翼がいた
「名無しさんが気にする事じゃないのだ」
『え、でも…』
「これは元々名無しさんのために作っていたものなんだ」
『どういうこと?』
最近元気の無かった私のためにどうしたらいいか悩んだ挙げ句、発明に頼り、私を元気づけようとしたらしい
授業についていけず落ち込んでいた私を見て発明に集中したところで私は翼が構ってくれないと感じ更に落ち込んで…
最悪なループだった訳だ
『私達って、バカなのかな?』
「ぬはっ、名無しさんと一緒ならバカでも良いのだ」
『〜、私だって』
翼となら元気にもなれるんだからね!
END