いぬぼく 小説

□学校生活
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「ん…う…ん……」

誰かが、私を呼んでいる。
優しい声。懐かしい…
私の大好きな………


はっと目を開けるとそこにはまだ見慣れない天井。

…夢か。なんだか不思議な夢を見た。
愛おしくて切なくて、懐かしい…

携帯の画面を確認すると時刻は午前6時。
アラームまであと30分あったが、おかしな夢で目を覚ましたため二度寝する気分にもなれずベッドから起き上がる。

今日から学校か…
真新しい制服を引っ張り出しまじまじと眺める。
案外可愛いかも。凜々蝶とか似合いそう…
制服姿の凜々蝶を想像して頬を緩める。
連勝も制服か。二人の制服姿、楽しみだなあ。

制服をもう一度ハンガーにかけるとお手製のハーブティーを作る。確か、ラベンダーには鎮静効果があるんだよね。
昔、誰かからそう聞いたことがあるような気がする。
だから私は、悪い夢を見た時などにハーブティーを作る。

一口飲むとハーブの爽やかな香りが体をめぐる。
…ざわついていた心が、少し治まった気がした。

さて。支度を始めないと。

カーテンを全て開けて部屋いっぱいに朝日を入れる。
ハーブティーを飲みながら昨日買ったばかりの観葉植物に水をやり、制服に着替える。

髪の毛は昨日連勝が乾かしてくれたおかげで寝癖の一つもない。
簡単に櫛で梳かし鏡で全身をチェックする。

鏡越しに自分と目が合い、考えないようにしていた不安が押し寄せてきた。

新しい学校。
新しい人。
新しい環境。
私はまた、好奇の目に晒されるのだろうか。
また、多くの人に偽りの愛情を錯覚させてしまうのだろうか。
…また、人を狂わせてしまったら。

そんな不安を押し込めるように残りのハーブティーを一気に流し込んだ。
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