いぬぼく 小説

□妖館ウォークラリー
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懇親会が終わり学校生活も特に問題もなく過ぎていった。


今日は日曜日。


昨日はやく寝たせいか目が覚めたとき、時計は午前7時過ぎをさしている。

まだ起きるには早い時間だけど、寝溜めというものができない私は早速起き上がって支度を始めることにした。

朝食を取るにはまだ早いし、ラウンジにも誰もいないだろうなあ。

色々と考えた末に屋上へ行ってみることにした。
野ばらちゃんから景色が綺麗だって聞いてたから行ってみたかったんだよね。

ウキウキしながらエレベーターに乗り込みボタンを押す。
今日は何をしようかなあ…。
そんなことを考えている間にエレベーターは屋上へ到着した。

屋上の庭園へでると、そこには見知らぬ人が2人。

1人は赤銅色の髪をサイドでまとめ、なぜかウサミミをつけたスーツ姿の男性。後ろ姿だから顔は見えないけど、多分御狐神さんと同い年くらいかな?
もうひとりは私や凛々蝶と同い年くらいの金髪に青い目をもち、なぜか柔道着を身につけた男の子。

…誰だろう、この人たち。
連勝の言っていた留守中の住人かな?

それにしても、この金髪の男の子、可愛い…

すると空手の技の練習?をしていた金髪の男の子と目が合った。


「誰だお前!何見てんだよ!」

「えぇっ!?い、いや、知らない人がいたから、つい!」


可愛い見た目に反した乱暴な言葉に驚いてしまう。
でも、ギャップがあってそれはそれで可愛いかも…。
そう考え、思わず口元がほころぶ。


「お、おい!お前、何笑ってんだよ!あんまりナメてっと『渡狸〜女の子に乱暴な言葉使わなぁ〜い』


ずっと背を向けて座っていた男性が立ち上がり口を開く。
手には尻尾をがっちりと掴まれた小さな狸がぶら下がっている。


わわ、物静かそうに見えて、この人もなかなかのギャップ!

「はぁーい☆ボクは夏目残…っ」

くるりとこちらを向き軽い口調で話し出した彼は、私の姿を見て言葉を止めた。
え?どうかしたのかな…?

「あ、あの…?」

「…莉桜、たん…」

「え?」


彼は私をじっと見つめると小さく私の名前を口にした。

えぇと…前に会ったことあるっけ…?
でもなんか見た目印象的だし、忘れるとも思えないんだけど…!

戸惑う私の姿を見て彼は俯き、一瞬悲しそうな顔をして何か呟いた。

「え?なんて言いました?」

「なんにも言ってないよ☆」

ぱっと顔を上げるとさっきのような笑顔。でも何かを探っているような、そんな印象を受けた。
もしかして、この人って…

「じゃあ、改めて〜、初めましてっ。ボクが誰かって?ボクは夏目残夏。渡狸のSSさっ☆
あ、渡狸って言うのは、コレのことねっ☆」

夏目残夏と名乗る男性は左手に握っている小さな狸を私の目の前に掲げる。

「え!?これぬいぐるみじゃないの!?」

「う、うぅ…残夏、てめぇ!離しやがれ!」

気を失っていたらしい狸は意識を取り戻してジタバタと暴れだす。

うわぁ、か、可愛い…!
思わず手を伸ばす。
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