いぬぼく 小説

□考えるよりも
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心配していた学校生活も2週間が経過した。



「先生!髏々宮さんがアルコールランプで焼のり炙っています!」

「先生!髏々宮さんが教室に犬を連れてきてます!」

「先生!髏々宮さんが宙を見ています!」

「先生!マラソン中に髏々宮さんが逃走しました!」

「先生ー髏々宮さんが…」



どよーんと効果音の入りそうな顔で生徒達を眺める凜々蝶。


「凜々蝶大丈夫?マラソン、やっぱキツかった?」

「ああ、莉桜…僕は大丈夫なんだが……髏々宮さんが心配だ…。」

「ああ、カルタね。」


凜々蝶は心配性なうえに人一倍、人から嫌われることを気にしている。だからこそ、カルタが多くの生徒から噂されていることも気になるのだろう。
現にカルタは体育から帰ってきていない。
探しに行こうかとも思ったが、いつものことなので帰ってくるまで待つことにした。


体育の後は数学の授業だっだ。
マラソンで疲れたこともあり、眠気が襲ってくる。

ううん、眠い…。
チラリと横を見ると凜々蝶も卍里も実に真面目に授業を受けている。
まったく…二人とも、真面目なんだから。

「えーここのXに代入してー
ここをー…」


ガラッ


急にドアが開いたかと思えば、そこにはマラソンの途中でいなくなったカルタの姿が。

「髏々宮さんだ…。」

「何、どこ行ってたんだ?右手傷だらけじゃん…。」

「何か体育の時急に走り出して…。」

「怖ーーっ。」


彼女の姿を見た途端、教室がざわつく。
その様子を心配そうに見つめる凜々蝶とむっとした表情を浮かべる卍里。


「髏々宮か。まったくどこへ行っていたんだ。
…まあいい、早く席につけ。」


「おい、てめーら!俺の方が不良だぜ!」

「渡狸、座りなさい。」

ガタンと立ち上がり、怖いぞ!!と叫ぶ卍里。

クラスメイトの視線は卍里に集まったものの、不良…?とハテナマークを浮かべる人がほとんどだ。

私はといえば、カルタの右手の傷は気になったものの、笑いをこらえるのに必死だった。
卍里、面白すぎる…っ!


そうこうしているうちに席についたカルタはお弁当を広げ堂々の早弁を始める。


「おい、今度は早弁だよ。」

「すげー…。」


「…っく、っははっあははははっ!」


堪えきれず笑い出してしまう。


「え?莉桜…?」

クラスのみんなが驚いて私を見ている。


「あはっ、はははっ、卍里もカルタも、面白すぎ…っ!」


「こら桜鎌、静かにしなさい。授業中だぞ。」


「あははっ、ごめんなさあいっ!」


最初は驚いていたクラスメイトもだんだんと笑い出した。


「まあ確かに、ちょっと変わってるけど面白いっちゃ面白いかもな。」

「二人とも良いキャラしてるかもねー。」


「はいはい、髏々宮の話はもういいから授業再開するぞー。」


先生の言葉によって再び退屈な授業が始まる。
私は勉強は得意な方なので高校のはじめの授業は簡単すぎて眠くなってしまう。

アメリカの方が進んでたしなぁ…。

窓の外を見て、ふあぁ、とあくびをした。
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