いぬぼく 小説

□学校生活
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「…大丈夫。」

エレベーターに乗って一人で呟く。
大丈夫。そんなに一瞬で影響される人はごく稀だ。
近付かなければ大丈夫。
安易に関わらなければ大丈夫。
油断しなければ大丈夫。


…よし。


小さくつぶやいてラウンジのドアを開ける。

「おはようござ『めめめめめめめ、メニアアアアアアック!!!』

驚きの反応を返す前に切られるシャッター。

「莉桜ちゃんの制服姿…メニアック!まるでお人形ね!?白ニーソがとっても良く似合うわああっ!」

「の、野ばらちゃん、落ち着いて…!?」

相変わらず朝から元気な野ばらちゃんのおかげで緊張が吹き飛んだ。
野ばらちゃんがいてくれて、良かった…

朝食を注文しようと席を立つと御狐神さんが入ってきた。
凜々蝶の姿はまだないので、凜々蝶を呼びに行く前に注文を済ませておくのだろう。
パンケーキを頼み、御狐神さんの邪魔にならないように少し横によける。


「おはようございます、桜鎌様。」

「おはようございます、御狐神さん。」


彼の挨拶に笑顔で応え、彼が注文をする様子を眺める。

注文を終えこちらに振り返り、

「制服、とてもよくお似合いですよ。」

そういってラウンジを出ていった。


彼は普段、そんなことを言う人ではないと思う。
…影響されやすい人なのだろうか。
直感的にそれは無いはずだと思う。
鎌鼬の力のおかげで、洞察力はとても鋭いのだ。

そんなことを考えつつパンケーキを受け取り野ばらちゃんの隣に座り、朝食を取り始める。

「野ばらちゃん、連勝は?」

「ああ、反ノ塚ならまだ寝てるんじゃないかしら?全く、そろそろ起こさなくちゃ…」

ちょっと行ってくるわね、と言って野ばらちゃんは飲みかけのコーヒーを残し席を立った。


「…莉桜ちゃん、おはよう…」

「おはよ、カルタ!制服、可愛い♪」

こういうのをメニアックっていうんだね!と一人納得する私に、ありがとうと、カルタは呟く。視線が一点に集中している。

「カルタ、はい。あーん」

視線に気づいた私はパンケーキを一口サイズに切りカルタに差し出す。
カルタはぱあっと目を輝かせ、あー。と口を開ける。
可愛い。本当に可愛い。何この生き物。

パクンとパンケーキを頬張ると私に抱きつく。

「莉桜ちゃん、好き。優しい。」

「私もカルタ好きっ!大好きっ!」

私も腕を回しそう応える。

「……君たちは何をやっているんだ…。」

いつの間にやらラウンジに来ていた凜々蝶に呆れたように目を向けられる。

「りいりいちいよおお!メニアックっ!可愛い!」

「はあ!?莉桜、君さっそく雪小路さんに似てきていないか!?」

「似てきてないい、メニアックぅ」

朝から不安になっていた分笑い合えるのが楽しくて、胸がいっぱいになる。
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