いぬぼく 小説

□懇親会
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連勝と顔を合わせないように、野ばらちゃんたちが妖館を出てから部屋を出る。

私は凜々蝶の挨拶に間に合えばいいから、ラウンジでミルクティーでも飲んでから行こうかな。

小太郎くんからミルクティーを受け取り、椅子に座って口をつける。
この格好で外に出るのは勇気いるなあ…
また絡まれたら、と考えるとゾッとする。
やっぱり、まだ怖いかも…。


「桜鎌様?」


不意に声をかけられ振り返ると、そこには御狐神双熾。

「あれ?御狐神さん、どうかしたの?凜々蝶、もう行ったよね?戻ってきたの?」

御狐神さんの表情が曇る。

「凜々蝶様には、契約を解消されました。」

寂しそうに笑う御狐神さん。

「そっか…。ふふ、私達、フラレ組だね。」

「桜鎌様も、何かあったのですか?」

目を丸くして聞く御狐神さん。

「連勝と喧嘩しちゃったの。」

「そうですか…」

「御狐神さん、懇親会は行かないの?」

「…行こうと思っています。せめて、次のSSが見つかるまでは凜々蝶をお守りできたらと…」

私が聞くと彼は少し迷った様子を見せたが強く答えた。


「桜鎌様は、どのような方法で会場へ行かれるのですか?」

「え?あぁ、私は歩いていくしかないかなって」

ちょっと恥ずかしいけどね、と苦笑しながら言い足す。

「それでしたら、僕が会場までお送り致します。」

「え!わ、悪いよ!」

「いえ、送らせてください。この前のようなことがあっては、私の気が収まりません。」

「…いいの?」

「はい。フラレ組同士、仲良く致しましょう。」

少し悪戯っぽく笑って彼は言った。

気を使わせてしまって申し訳なく思うが、正直不安だったのでとてもありがたい。誰かがいてくれるだけでもありがたいのに、送ってくれるなんて…

車に乗りながら、お互いに仲直りできるよう、検討を祈りあった。
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