いぬぼく 小説
□考えるよりも
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キーンコーンカーンコーン…
授業の終わりを告げるチャイムが鳴り響く。
今は4限目だっだから次はお昼休みだ。
「凜々蝶、卍里、お昼いこーっ!」
「ふん、群れるのが好きだな。」
「俺は不良だぜ、女共と飯なんか食うか!」
「いつも通り屋上でいいよね?
私購買よりたいから卍里、先にシート持ってってくれる?」
悪態をつく凜々蝶と不良ぶる卍里の言葉を完全スルーして話を進める。
仕方ねーな…とシートを受け取る卍里。
二人とも、口では迷惑そうでも満更でもなさそうなのだ。
「それじゃあよろしくね!すぐ行くから!」
凜々蝶も購買に寄るというので一緒に購買に向かう。カルタは授業が終わってからすぐに出ていったから多分購買にいるよね。
生徒で賑わう購買の中には案の定カルタの姿があった。
が、隅にぽつんと立ちお財布を逆さまにして涙を浮かべている。
早弁したからご飯がない上に、お金も持ってきてなかったようだ。
「お金が無いのか?愚かだな、早弁なんかするからだ。」
凜々蝶が歩み寄り声をかける。
「これでも食べるか?僕は少し胃の調子が悪いんでな。」
さっとあんぱんを差し出すと、カルタの目がぱあっと明るくなる。
「くれるの…?」
「ふん、調整豆乳も飲むならつけるが…?」
ぎゅっと、カルタが凜々蝶に抱きついた。
「好き…!」
「えっ」
「ちよちゃん…最初あった時から…優しい子だと思ってた…」
「う、うそつけ!食べ物もらったからだろう…!」
カルタは目で見たこと、聞いたことより感じたことを信じる子だ。
だからこそ、凜々蝶の悪態に隠された本当の気持ちを良くわかってくれる。
良かったね、凜々蝶。
私がアメリカにいる間にも色んなことがあったと連勝から聞いていたので、こんな風に良い理解者が出来ることは私にとっても嬉しかった。
「じゃあ私は、とりあえずパン買ってくるね!」
第六感だの五感だのと言い合っている凜々蝶たちにそう告げてパンを見に行く。
何買おうかな…。
「あらぁ莉桜ちゃん、今日も来てくれたの?」
「こんにちは。今日も来ちゃいました!」
購買のおばちゃんは私の顔を覚えてくれていて購買に来る度に声をかけてくれる。
「これあげるわ。これも持ってって!」
と、ひとつパンを買っただけで3つおまけをつけてくれる。
嬉しいけど私、こんなに食べれないよ?
お礼を言って購買をあとにし、自動販売機で飲み物を買おうと列に並ぶ。
「やっほー、莉桜ちゃーん!」
名前を呼ばれ顔を上げるとそこには一人の男子生徒。
ええと、たしか連勝と同じクラスの…
「山内先輩…?こんにちは。」
「名前覚えててくれたんだ、嬉しいなぁ。」
名前を間違えていなかったことに密かにほっとする。
山内先輩は連勝の友達で、連勝と登校している時に話してからよく声をかけてくれる。見た目はチャラチャラしているけれど優しい人だ。
「飲み物買うの?」
「はい。今日、持ってきてなかったので。」
「じゃあこれ。あげるよ。」
はい。とビニール袋を手渡される。
「え?なんですか、これ?」
中を見るとパックやペットボトルのジュースが5本ほど入っている。
訳が分からず頭にハテナマークを浮かべる。
「莉桜ちゃんにあげようと思って。」
「えっ!?そんな、悪いですよ!」
「あはは、うそうそ、ジャンケンに負けたから今日は俺がお使い役なの。」
「じゃあこれ先輩達のじゃないですか!余計受け取れないですよっ!」
私がそう言い返すと山内先輩はケタケタと楽しそうに笑う。
「莉桜ちゃんて本当に面白いね、いいから受け取ってよ。莉桜ちゃんにあげたっていえばあいつら絶対怒らないから☆」
あいつらって言われても…連勝と山内先輩しか分からないんだけどなぁ。
そう思いつつもあんまり断るのも悪いと思いお礼を言って素直に受け取る。
遠巻きに凜々蝶とカルタがこちらを見ている。
凜々蝶のことだから、私が絡まれているとでも思っているかな?
「それじゃ、山内先輩が怒られたら連勝につけといてくださいね!
ありがとうございました!」
急いで凜々蝶たちの元へ向かう。
「莉桜、大丈夫か?彼は一体…。」
「彼は連勝のお友達、なんかジュース貰っちゃった。」
「顔が広いんだな…」
「莉桜ちゃん、ちよちゃん、行こ。渡狸、待ってる。」
カルタに手を引かれて私たちは屋上へと急いだ。
ちなみにジュースもパンも4人で(主にカルタ)完食しました。