青春プレイボール!

□18
4ページ/4ページ


友沢くんのおかげで、かなり楽になった気持ちとともに、教室に向かう。すると、廊下でさっそく聞かれた。みずきちゃんと付き合ってるって本当?と。

「違うよ、親友なの」

「なんだ、じゃあやっぱり友沢くんね」

「それも違うよ、友達なの」

もう、誤解が誤解を呼びそうで。うわさとは恐ろしいものよ……。みずきとのうわさといい、友沢くんとのうわさといい……どこから出てきたのやら。
ため息まじりで教室に入り、席に戻ると、すぐに周りの友達4人がこちらを向いた。

「みずきちゃんから聞いたわよ。ふたりで百合香ちゃんの実家に行くんですって?」

「いいなあ、アタシも百合香の家、行きてえなあ」

「みずきちゃん……まるで、百合香ちゃんの、恋人みたい……」

「あっ、それわかる! 百合香ちゃん、みずきちゃんを両親に紹介するのー?」

犯人見つかった。あなたか、みずきさん。なに言いふらしてるんですか。悲しいことに、人望あり、人気あり、世渡り上手なみずきが言ったことなんて瞬く間に広がっていくってわけか。うわさとは恐ろしいものよ……。

「私は誰とも付き合ってませんから」

私の言葉を聞いた4人は顔を見合わせた。ちょ、ちょっと。なんでそんな驚いた顔しているの。

「み、みずきちゃんは?」

「親友です」

「じゃあ、友沢くんは違うのかしら?」

「チームメイトです」

「えーとね、じゃああの人! 猪狩くんはー?」

「チームメイトです」

「それなら、文化祭で百合香が連れて来た男はどうなんだよ?」

「後輩です」

質疑応答のごとく、淡々と答えれば、彼女たちもわかってくれたらしい。よかった、自分の友達にくらいは誤解されたくないもんね。
ふと、廊下の方を見ると、みずきと友沢くんが教室に戻ってきたのが見えた。みずきは私と目が合うと、パタパタとこちらに駆け寄ってきて、友沢くんはそそくさと自分の席へ。

「百合香!」

「みずき、おかえり。あのね」

一度目を閉じて、また開く。怒ってますよ。私。みずきに通じるように、強く念じながら笑ってみせた。

「実家は、やめましょうか」

「ごっ、ごめんなさい!」

あ、よかった。伝わったみたい。ほっと胸をなでおろしたところで、いつもみたいに表情をゆるめて、みずきの頭をこづいた。

「もう、変なうわさたっちゃったんだからね」

「ええ、私は百合香に悪い虫が付かなくてアリだと思ったんだけどなあ。だって、周りになんて言われようと、私たちは恋愛なんて括りじゃ収まりきらない大親友じゃない!」

「なーし。だって、付き合ってるってことは別れがあるってことでしょ? ……大親友なら、ずっと変わらずにいられるよ」

みずきは2、3度ぱちぱちと瞬きをして。

「みんなー! 私と百合香、付き合ってないよー! ただの親友だからねー!」

これで一件落着かな。そう、息を吐いた。結局、実家ではなく、寮の隣にあるアパートにみずきを泊めることで話はまとまった。今年は帰れなさそうだな。
後ろを向いたら、友沢くんがこっちを見ていて。小さく手を振れば、控えめに片手をあげてくれた。
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ