青春プレイボール!

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「さ、逃がさないよ」

「わ、わかってるよ」

「全部白状なさい!」

ご飯を食べたあとだというのに、どうも先輩とあおいちゃんは元気いっぱい。私に聞きたいことが山ほどあると目を輝かせた。

「それで、なにを白状すればいいんですか?」

「決まってるよ、ガールズトーク!」

「友沢くんとラブラブになるまでの話が聞きたいの。あ、今後の計画についても」

「私も、聞きたいかも……」

なんと。まさか、小筆ちゃんも聞きたいのか。そんなにすごいことでもないと思うんだけどな。どうしよう。みずきの方を向けば、彼女はむん、と胸を張って私の前に出た。あ、悪魔の顔。

「へん、そんな大したものじゃないですよ。友沢が百合香をストーキングしまくってゲットしたんです」

ああ、やっぱり。歯を見せていじわるく笑うみずきは、ありもしないことを先輩たちに吹き込む。友沢くんはそんなイメージがないらしく、あおいちゃんや先輩もこれには口を大きく開いた。

「え、友沢くんってそういうタイプ? 意外だなあ」

「いえ、普通に普通の人ですよ。みずきも変なこと言わないの」

ちょっと、百合香。どうして言っちゃうの。私はあなたがどうしてウソをつくのか聞きたいです。むくれるみずきをやれやれとなだめると、あおいちゃんがくすくす声を漏らした。

「ボクは前から思っていたけど、百合香も友沢くんも、よくお互いのことを見ていたよね」

「2組で、百合香ちゃんと友沢くんが、付き合ってるっていうのも……本当かなって、思ってたの」

「そのうわさは、付き合う前だったから違うけど……きっと私がよく友沢くんを見ていたのは本当、かも」

顎に指を当てる。練習の時、汗を流していた友沢くん。そんな彼が浮かばれるのも、私が見ていたから。あの友沢くんがねえ。あおいちゃんが頭に腕を組む。その言葉は聞いたことがあった。神高くん。彼も同じことを言ってて。

「ねえ、あおいちゃん」

「なに?」

「友沢くんって、そんなにすごい人なの?」

あおいちゃんにひそりと聞くと、手を解いて打者の構えをした。

「そりゃ、ね! 肘を壊したのに、ショートとしてあんなに成功してるんだもん。プロ入りは確実だろうね」

「ぷ、プロ入り!?」

遥か雲の上、まさにそんなイメージだったことを呟かれて、小さく悲鳴をあげる。一緒に同じことをした人がいて、彼女に私は肩をとられた。

「百合香ちゃん、玉の輿! いいなあ!」

いや、いやいや。玉の輿とかそうじゃなくて、プロ入り確実?友沢くんが?先輩がほっぺをつついてくるのにも反応できない。

「わ、私、そんなすごい人と……」

「で、でも……私は、友沢くん、百合香ちゃんじゃなきゃ、ダメだと思うよ」

青くなる私に気づいた小筆ちゃんがそれらしくフォローしてくれる。先輩も私の様子に始めたのは肩もみ。お、お上手なんですね。

「百合香ちゃん、男を心配させちゃダメよ。女は海のように広く深い心で男を待っていてあげなきゃ」

「なるほど……」

先輩は、凝ってますねぇ。と私の肩をもみ続ける。女性の顔だ。こう、何人も経験してきた感じの。

「百合香、ボク、友沢くんと付き合い始めたきっかけが知りたいな」

「えっと、クリスマスに告白されて、かな」

「ひゅーっ、やるわね友沢くん!」

先輩、あおいちゃん、小筆ちゃんが女の子らしく盛り上がる。一方、ずっとしゃべらないみずきは頬を膨らませて布団に潰れてて。きっと友沢くんの話題だからかな。みずきに覆いかぶさる。へへへ、食べちゃうぞー。そしたら。

「できるもんならやってみなさいよ!」

「い、いたいいたい!」

プロレス始まりました。見ていたガールズ3人もさっきのお湯かけ合戦をしていた時のような表情になる。あ、はじまる。そう思った時には、手を獣のように構えたあおいちゃんが私の上にのしかかってました。それから、投げ飛ばされた小筆ちゃんが、反撃とばかりにぶつけた枕をきっかけに、プロレス枕投げへ。

「やったな! 百合香!」

「あおいちゃん、こそっ!」

「えいっ!」

「危ないっ……ふう」

「ちょ、人を盾にしないでくださいよぉ!」

その戦争は夜遅くまで行われ、その騒ぎようは、下の男子部屋にも伝わっていたとか。
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